絶滅危惧種 PR

【アダックスとは】特徴や生息地・絶滅危惧種に至った原因を紹介

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

「アダックスってどんな動物?」

「アダックスは絶滅危惧種なの?」

「アダックスは動物園で見られるの?」

アダックスはアフリカのサハラ砂漠に生息するアンテロープ(カモシカ)の仲間で、ねじれた長い角が印象的な野生動物です。

国内では2か所の動物園で飼育されています。

IUCN(国際自然保護連合)レッドリストでCR(Critucally Endagered:近絶滅)に記載されており、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いとされている種です。

最後まで読んでいただくと、アダックスの特徴・生態・生息地・保護活動について広く知ることができますので、ぜひご覧ください。

「アダックス」とは

アダックス(Addax nasomaculatus)は偶蹄目ウシ科アダックス属に分類され、アダックス属を公正するのはアダックス一種のみです。

アダックスはアフリカ北部のサハラ砂漠とその周辺に生息し、人が住めないような厳しい環境でも生きられます。

オス・メスともに頭部にもつ1回半〜3回ねじれた見事な角と、極度の乾燥や強い日差しにも耐えられる身体が特徴的です。

アダックスは、砂漠という特殊な環境に最も適応したアンテロープ(カモシカ)の一種だといえます。

「アダックス」の特徴

アダックスはオスがメスよりも一回り大きく、オスが体長120〜170cm・肩高105〜115cm・体重100〜125kgで、メスが体長95〜110cm・肩高95〜110cm・体重60〜90kgです。

太陽の強い日差しから身を守るために皮膚は厚く、背中は淡い砂色で冬は灰茶色になります。腹部と4本の脚は白色です。

額には黒褐色でやや長めの毛が生え、鼻の上にX型の白い模様があります。

オス・メスともに1回半から3回ねじれた大きな角をもち、角の長さはオスで60〜109cm、メスで55〜88cmです。

ひづめは扁平に開き丸みを帯びており、接地面が大きく砂の上でも体が沈みにくい形となっています。

印象的な形の角と日差しを照り返す明るい色の毛皮をもち、長い四肢で立つアダックスの姿はとても魅力的です。

「アダックス」の暮らし

アダックスは、砂丘や礫砂漠に群れを作って生息しています。年長のオスがリーダーとして5〜20頭の群れを率い、かつては千頭以上の大規模な群れを見たという話もありました。

アダックスは常に食べものや雨を求めて長距離を移動し、主な活動時間帯は夕暮れや夜間です。

日差しや風から身を守るために、アダックスは岩の陰などの砂地にくぼみを掘って休むこともあります。

チーター・ヒョウ・ライオン・リカオンなどが天敵ですが、アダックスは歩く速度が非常に遅いため襲われると逃げられません。アダックスの子どもは、カラカル・サーバル・ブチハイエナなどにも狙われます。

天敵に対して無防備であっても、過酷な砂漠の環境を生息地としてアダックスは生き延びてきたのです。

「アダックス」の食性

アダックスは草や低木の葉・果実・地下茎などを食べる草食性の動物です。立派な角は地下茎を掘り起こす時にも役立ちます。

アダックスは水分を食べものや朝露から摂取し、体内の脂肪を水に変化させることもできるため、水を飲まなくても数か月以上生きることが可能です。

また、体内に取り入れた水分を残らず利用するため、乾燥した糞と濃縮尿を排泄します。アダックスは水が乏しい砂漠の環境に適応した草食動物なのです。

「アダックス」の繁殖

アダックスの繁殖期は、1〜4月または9〜10月です。アダックスの妊娠期間は260〜 270日で、メスは1回の出産で1頭の子どもを産みます。

生まれたばかりの子どもは体重5〜7㎏で親とともに生活し、授乳期間は6〜9か月です。
オスは生後2〜3年、メスは生後1年半で性成熟します。

世界各地の動物園には2千頭以上のアダックスが飼育されており、記録に残っている飼育下での寿命は25年8か月です。

厳しい自然環境での寿命はそれほど長くないと推測され、1回の出産で生まれるのは1頭と繁殖力が高くないことも、生息数が回復しない要因かもしれません。

「アダックス」の分布・生息地

アダックスの分布域は、アフリカ北部のサハラ砂漠とその周辺です。アダックスの生息地は砂丘や礫砂漠で、年間の降雨量が100ミリ以下という乾燥地帯も含まれます。

アダックスはかつてアフリカ北部に広く生息していましたが、チャド・ニジェール・モーリタニア・アルジェリア・エジプト・スーダン・リビアでは絶滅しました。

野性下のアダックスは、サハラ砂漠の一部であるニジェールのテルミット・ティントゥーマ国立自然保護区に個体群が残るのみとなっています。

テルミット・ティントゥーマ国立自然保護区は、アフリカ大陸最大の保護区の1つであり、面積はルワンダのほぼ4倍、約10万㎢です。保護区のうち、特にアカシアが生える山地東斜面は、猛暑の中強い日差しを避けるためにアダックスが好んで利用しています。

一度は絶滅したチュニジア・モロッコにはアダックスが再導入されていますが、生息しているのは囲われた保護区の中だけです。

かつては千頭を超える群も見られたとのことですが、現在の生息数は野生下の個体全てを合わせても100頭以下と推定され、絶滅寸前の危機にあります。

「アダックス」が絶滅危惧種となった理由

アダックスの生息域は過去100年間で99%も失われ、わずかに残った生息域でもアダックスの存続が脅かされています。

アダックスを圧迫する具体的な要因は次のとおりです。

  • 密猟・乱獲
  • 観光客による撹乱
  • 気候変動による干ばつ
  • 石油事業による影響
  • 放牧地の拡大による影響

体が重く動きが緩慢なアダックスは昔から狩猟の獲物となり、肉は食用・毛皮は靴やサンダルの原料・角は塩を掘るのに利用されてきました。

20世紀になって高性能の自動車と銃器が導入されると、砂漠の奥地にまで人が入り込むようになり、近代化された狩猟がアダックスの減少に拍車をかけています。

また、気候変動による干ばつで餌資源が失われれば、すでに生息数が減っているアダックスにとって致命的な事態です。

さらに、最近の生息数減少は、石油の探査と生産開始や生息地における人の活動が増加した時期と重なっています。

保護区内に石油採掘のための井戸が20本以上掘られ、パイプラインが敷かれているほか、警備員による密猟も報告されているなど、石油事業による影響は否定できません。

アダックスを絶滅の淵から救うためには、地域住民や石油事業者と協力した生息環境の保全と密猟対策が急務といえるでしょう。

「アダックス」の保護の取り組み

アダックスは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでCR(Critically Endangered:近絶滅危惧)に掲載された希少種です。

また、アダックスは希少種保護の国際的な取り決めである「ワシントン条約」(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)で付属書Iに掲載されています。

よって、商業目的のための国際取引は全面的に禁止、学術目的の取引には輸出入国双方の政府が発行する許可証が必要です。

さらにニジェールではアダックスの狩猟を法律で禁止しています。

アダックス保護のためには、ニジェールと国境を接するチャド・石油事業者・NGO・地元コミュニティなどの協力を得て連携していくことが不可欠です。

生息地の保全

地球上に最後に残されたアダックスの生息環境が、これ以上縮小・劣化することを食い止めなければなりません。

2000年代初めにアダックスの個体群が発見されたニジェール東部のティントゥ-マ砂漠が、2012年にテルミット・ティントゥーマ国立自然保護区とされました。

しかし2019年、ニジェール政府は石油利権との軋轢を避けるため、自然保護区の境界線を引き直し東部の約5万㎢が除外される事態となっています。

政府は代償として保護区を西に拡張しましたが、結果としてアダックスの生息地が保護区から外れてしまいました。

石油の採掘が増えれば、アダックスは他の場所に避難することが考えられます。 しかしアダックスにとって好ましい生息環境がティントゥ-マ砂漠に限られるのであれば、長期的にみて保全は達成できません。

今後はモニタリングによりアダックスの個体数や移動範囲を把握し、密猟防止を強化するなど、保護区外でもダックスが安心して利用できる環境を確保することが求められます。

なお、アダックスの生息地保全を長期的に実施するためには、地元住民の参加が欠かせません。ニジェールでは、野生動物を保護する公約を含む宣言や協定が署名されており、今後他の地域にも広がることが期待されています。

再導入

チュニジアではアダックス保護の国家戦略の一環として、フェンスで囲まれた大規模な保護地域にアダックスを再導入しています。 長期的な目標は、可能なところからフェンスを撤去して野生の状態に近づけることです。

Sahara Conservationは、再導入のための募金活動などを通してチュニジア野生生物当局を支援してきました。

しかし、アダックスを飼育下から遠隔地に移動するのは技術的にも物流的にも困難で、費用がかかる上にリスクがないわけではありません。

また、世界中で飼育されているアダックスの遺伝的多様性は、ニジェールに残された個体群と比較して貧弱であることも事実です。 野生個体群と飼育個体群に関する遺伝学的研究も、さらに拡大されるべきでしょう。

テルミット・ティントゥーマ国立自然保護区にかろうじて生息するアダックスの遺伝的多様性は、進化の過程で環境へ適応してきた結果であることからも大変貴重です。

再導入はアダックスの保護において重要な役割を果たしますが、それでもなお残された野生下の個体群を保護することが最優先なのです。

私たちにできること

砂漠の過酷な環境に適応し生き延びてきたアダックスは、いま世界で最も絶滅に近い野生動物であるといっても過言ではないでしょう。

アダックスを100頭に満たない状況に追いやった、生息環境の劣化や密猟の影響などの要因は未だ取り除かれていません。

アダックスの保護活動をしている団体に寄付をしたり、活動に参加したりすることも選択肢の一つです。

代表的な団体として、 Sahara Conservationがあります。
国内では2か所の動物園でアダックスが飼育されており、角をいただく印象的な姿を実際に見て生態を学ぶことができます。

アダックスを飼育している動物園は次のとおりですが、最新情報はそれぞれの公式サイトでご確認ください。

アダックスの生態や生息地について関心をもち情報を得ることが、アダックスを絶滅の危機から救う第一歩です。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。