絶滅危惧種 PR

【リカオン】特徴や生息地・絶滅危惧種に至った経緯を紹介

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「リカオン」

「リカオンって何?」
「リカオンはどこにいる動物?」

「リカオンは絶滅危惧種なの?」

リカオンと聞いてすぐに姿を想像できる人は少ないかもしれません。

リカオンは日本ではあまり馴染みのない動物ですが、イヌ科の野生動物でアフリカ大陸に生息しています。

IUCN(国際自然保護連合)レッドリストでEN(ENDANGERED:危機)に記載されており、非常に高い絶滅の危機にさらされている種です。

特にアフリカ大陸北部・西部個体群は同リストでCR(CRITICALLY ENDANGERED:深刻な危機)となっており、さらに絶滅の恐れが高いとされています。

最後まで読んでいただくと、リカオンの特徴・生態・生息地・保護活動について広く知ることができますので、ぜひご覧ください。

「リカオン」とは

リカオンは哺乳綱食肉目イヌ科リカオン属に属し、リカオン属はリカオン一種のみで構成され、属名のLycaonは「オオカミ」を意味しています。

生息地はアフリカ南部と東南部が中心です。

リカオンは、同じイヌ科でアフリカに生息するハイエナとしばしば混同されます。

リカオンとハイエナは体色は似ていますが、リカオンの体の大きさはハイエナに比べて半分ほどで体つきも異なります。

「リカオン」の特徴

リカオンは、体長76〜112cm・肩高60〜78cm・体重17〜36kgで四肢は長く、雌雄はほとんど同じ大きさですが、南方のものほど大きい傾向があります。

リカオンの耳介は大型で丸みを帯びており、体温を調節する効果があると考えられ、鼻から額にかけては黒色、尾の先は白色です。

リカオンの体毛は短くて粗く、毛白・黒・灰色・茶色・黄褐色などの不規則なまだら模様で、模様は個体ごとに異なりますが中にはまだら模様がない単色の個体も見られます。

肩よりも腰が高いため、遠くから見てもブチハイエナと判別が可能です。
リカオンの特徴を一言で表せば、丸い大きな耳をもつ野生の犬といったところです。

「リカオン」の暮らし

リカオンはパックと呼ばれる7〜15頭程度の群れで生活し、40〜60頭の大きな群れになることもある社会性の強い動物です。

オスは産まれた群れの中にとどまり、群れのオス同士は血縁関係にある一方、メスは生後14〜30か月で姉妹とともに別の群れに移ります。

群れの中に占めるオスの割合はメスより多く時にはメスの倍以上の数になりますが、雌雄の力関係や役割は対等です。

リカオンの群れは互いの結びつきが強く、群れの中では老いた個体や弱っている個体に対して食物を吐き出して与えるなど助け合う行動が見られます。

群れのリーダーは意思決定において絶対的な力をもっていて、先頭に立って群れを統率し他の個体はリーダーに追従することが普通です。

行動圏は1,500~4,000㎢程度で、縄張りを持たずに食糧事情や群れの大きさによって行動範囲を変化させます。

ほとんどのイヌ科の動物とは違い、リカオンには尿で臭い付けするような行動は見られません。

数キロ先まで響く「フーコール」と呼ばれる独特な甲高い鳴き声で、仲間を探したり呼んだりします。

昼行性ですが、月が明るければ夜間も活動することが可能です。

リカオンは警戒心が強く臆病ですが、群れが大きい場合にはライオンに立ち向かうこともあるといわれています。

社会性の強い群れの中で、役割をもって助け合いながら生活しているのがリカオンの暮らしの特徴です。

「リカオン」の食性・狩り

リカオンの主な獲物は小型のガゼルやインパラなどの中型草食獣ですが、シマウマなどの大型哺乳類、ウサギなどの小型哺乳類、家禽や家畜も襲うことがあります。

リカオンの歯は計42本で犬歯と第4臼歯は刃物状に発達し、肉を食べるのに最適です。

リカオンの狩りは主に早朝や夕方で、1日平均10キロメートルを移動して獲物を探しますが、獲物が少ない場合は2〜3日間探し続けることもあります。

視覚を使って獲物を探し静かに近づいた後、群れで協力して獲物を追い、追跡距離は通常2km程度です。

狩りの時は時速45〜 66kmの速度で獲物をしとめ、最大時速65キロメートルに達することもあるといわれています。

リカオンの狩りの成功率は60%以上、時には85%程度といわれ、ヒョウの成功率が15〜40%・ライオンが25〜30%・チーターが40〜60%程度なのに比べて高確率です。

群れの中では幼獣や若い個体が優先的に獲物を食べることが許されており、幼獣には獲物を吐き戻して与えます。

群れで行う狩りの高い成功率や若い個体に獲物を分配する行動にも、リカオンの強い社会性が現れているのです。

「リカオン」の繁殖

リカオンは決まった繁殖期が無いといわれており、一夫一妻で、群れの中で優位な位置の雌雄がペアとなります。

メスの妊娠期間は60〜80日で、平均すると70日前後です。

ツチブタやウサギなどが捨てた古巣が出産に利用され、1回の出産で生まれる子どもは平均8〜10頭で、多いと20頭の例もあります。

子どもは巣穴の中で3〜4週間ほど母親に世話されながら成長し、授乳期間は5週間ほどです。

その後ひとたび巣穴から出ると、子どもは群れ全体によって育てられ、オスもメスも同様に食べ物を吐き出して与えるなど世話をします。

生後8〜10週間ほどで完全に群れの中に入っていき半年ほどで狩りに加わるようになりますが、群れの一員として狩りが行えるようになるのは1年を過ぎる頃です。

オス・メスともに1〜1年半で性成熟すると、メスは2年ほどで同じ年に産まれた他のメスと一緒に群れを離れ分散していきますが、オスは群れに留まります。

しかし、群れが大きくなり過ぎると雄の小さなグループも分散し、新しい群れを作るようになるとのことです。

野生での寿命は10〜11年程度で、外敵はほとんどいませんがライオンなどに襲われることがあります。

「リカオン」の分布・生息地

リカオンは、アフリカ大陸のサハラ砂漠以南の草原やサバンナに主に生息しています。

現在の分布は、ナミビア・ボツワナ・モザンビーク・ジンバブエの一部・スワジランド・トランスバール地方などです。

生息地は主に標高3千m以下ですが、キリマンジャロの標高5千m以上で発見された例もあります。

リカオンは行動範囲が広いこともあり、詳しい生息数などを把握するのは容易ではありません。

「リカオン」の生息地

リカオンが生息するには、食糧となる十分な数の草食獣が生息する豊かな生態系が必要です。

リカオンの生息地は主にサバンナ・森林・藪地など視界の開けた場所ですが、森林地帯や半砂漠地帯などでも見られます。

一方、完全な砂漠地帯や密林などには、リカオンは生息していません。

垂直方向の生息域も広く、低地から標高1,800〜2,800m辺りの山岳地帯まで見られます。

リカオンは、餌を求めて広範囲を移動するため様々な環境を利用しているようです。

「リカオン」の生息数

リカオンは行動範囲が広く生息数の把握は困難ですが、近年の推定では7000頭に満たないとされています。

リカオンは、かつては砂漠や密林地帯を省くサハラ砂漠以南に広く分布し、近年まで100頭ほどの大きな群れも記録されたとのことです。

しかし、生息地・獲物の減少や害獣としての駆除などにより、北アフリカと西アフリカの大部分では既に絶滅し、中央アフリカと北東アフリカでも生息数が大幅に減少しています。

かつて生息していた39か国のうち25か国から姿を消し、リカオンの生息数は一時1,400頭程度にまで減少しました。

その結果、リカオンはエチオピアオオカミに次いでアフリカで2番目に危機的状況にある肉食動物となっています。

リカオンとよく混同されるハイエナの生息数3〜5万頭と比べても分かるように、リカオンは絶滅の危険性が非常に高まっているのです。

「リカオン」が絶滅危惧種となった理由

リカオンの生息数が激減した理由は次のことがあげられます。

  • 開発による生息環境の減少
  • 環境劣化による獲物の減少
  • 家畜を襲うという理由による駆除
  • 狂犬病や犬ジステンパーといった伝染病
  • ブッシュミート目的の密猟

リカオンは、縄張りを持たず常に移動しながら獲物を求めて暮らすため、広大な生息環境が必要です。

人口が増え開発が進むことにより自然が破壊されると、生息環境が狭められるのに加え、獲物となる草食獣も減少してしまいます。

リカオンの生息地に人の生活圏が入り込むことにより、餌不足のリカオンが家畜を襲うなど人との軋轢が増えることは無理もありません。

害獣として多くのリカオンが駆除されるほか、ブッシュミート目的の密猟も未だに存在するようです。

さらに、生息環境が狭まることで天敵に襲われるリスクが増すだけでなく、繁殖成功率が低下し遺伝的な多様性も失われることが分かっています。

飼い犬由来の狂犬病や犬ジステンパーといった伝染病によって、群れが壊滅するケースがあるのも事実です。

このように人間の活動が、リカオン減少の要因となってきたのは明らかです。

「リカオン」の保護の取り組み

IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでEN(ENDANGERED:危機)に掲載された希少種リカオンの生息数を回復させるため、研究者やNGOなどの取り組みが続いています。

主な内容は、人工的な保護増殖、保護区の充実など生息環境保全、地域住民への普及啓発などです。

いずれも一定の成果をあげていますが、未だリカオンが危機的状況を脱したとはいえません。
以下に、それぞれ紹介していきます。

保護増殖技術の確立

リカオンは繁殖力が高く、十分なスペースが確保されていれば繁殖は難しくありません。

野生状態から保護されたリカオンは、まず血液検査により伝染病の有無を確認してから他の個体と一緒にされます。

血液検査で判明する血縁関係などの個体ごとの情報は、リカオン全体の保護管理のためにも重要なデータです。

遺伝的多様性を保つために、施設で産まれた個体と野生個体を交配させることもあり、
施設で繁殖した個体は保護区などリカオンの生息要件を満たす場所に放獣されます。

リカオンの保護増殖技術がノウハウの蓄積により確立されてきているのは明るい兆しです。

生息地の拡大

人間の居住地などにより生息地が分断されると、リカオンの群れは自力で移動できなくなってしまうため、群れを人為的に保護区に移すプロジェクトが進んでいます。

リカオンが姿を消した地域でも、5年間に9つのリカオンの群れを国立公園内に導入することができました。

群れを移すためにはリカオンの生息環境が十分に確保されることが欠かせませんが、その後も再導入の成功が続いています。

このプロジェクトが始まってからリカオンの生息適地は140万ha以上に増加し、2025年までにさらに150万ha増やしていく計画です。

番犬プロジェクト

家畜を野生肉食獣に襲われる被害をなくすために、番犬を家畜と一緒に飼育することを提案しています。

番犬の存在により家畜の損失がなくなれば、罠をしかけて害獣である肉食動物を殺すことはなくなるという理由です。

2008年にプロジェクトが始まって以来230頭を超える番犬が配置され、ある地域では家畜の損失が年間6.7 頭だったのがほぼゼロになりました。

番犬プロジェクトは、害獣として駆除される肉食獣を減らすために、高い効果をあげています。

モニタリング調査

ほぼリアルタイムでリカオンの群れをモニタリングし、高リスクの地域に群れが入った場合には、ワクチン接種や罠の有無の確認などの対処を講じています。

リカオンは行動圏が広く調査が難しいですが、2010 年以来335 個を超えるGPS付きの首輪が装着され、リアルタイムの監視が可能となりました。

また、1989 年から4〜5年毎に実施されているのが、リカオンの写真による個体識別調査です。

それぞれの個体を区別することで生息数を正確に把握できるだけでなく、長期にわたる増減傾向と健康状態を把握することも可能になり、迅速な対処ができます。

このように、モニタリング調査は有効な保護対策を講じるために非常に重要といえます。

普及啓発

地域住民と信頼関係を作り、リカオンに関する正しい理解と保護の重要性を認識してもらうことは非常に大切です。

子ども達に対し野生生物との関わり方などについて伝えられる、有効な場の一つが学校であり、教育現場での普及啓発にも力が注がれています。

また、地域社会の伝統・文化・宗教的な要素を取り入れるなどの工夫も必要です。
リカオンを保護していくためには、地域住民との軋轢を解消することが不可欠であり、普及

啓発が鍵を握っているといえます。

私たちにできること

リカオンは遠く離れたアフリカに生息する野生動物ですが、現在、国内では2か所の動物園で飼育されており、生態を間近で実際に見て学ぶことができます。

リカオンを飼育している動物園は次のとおりですが、最新情報はそれぞれの公式サイトでご確認ください。

また、国内外でリカオンの保護活動をしている団体に寄付をしたり、現地ツアーや保護活動に参加したりすることも考えられます。

代表的な団体は次のとおりです。

リカオンの生態や生息地について関心をもち情報を得ることが、リカオンを絶滅の危機から救う第一歩です。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。