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【ユキヒョウ】特徴や生息地・絶滅危惧に至った原因を紹介

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「ユキヒョウは寒いところにいるヒョウ?」

「ユキヒョウは絶滅危惧種?」

「ユキヒョウが減少している理由は?」

「ユキ」という言葉は真っ白な雪を連想させますが、ユキヒョウはアジアの高山地帯に生息し、世界で最も高いところにすむネコ科の動物といえます。1970年代までは撮影された写真がなく、存在は知られながらも長く「幻の動物」とされていました。

IUCN(国際自然保護連合)レッドリストではVU(vulnerable:危急種)に掲載されており、野生下で高い絶滅のリスクに直面していると考えられている希少種です。

ここでは、次のことについて解説していきます。

最後まで読んでいただくと、ユキヒョウの特徴・生態・生息地・保護活動について広く知ることができますので、ぜひご覧ください。

 「ユキヒョウ」とは

ユキヒョウは食肉目ネコ科ヒョウ属に分類され、大きな斑点が特徴の白い毛皮が美しい肉食動物です。

ユキヒョウはアジアの限られた場所に生息し、山岳地帯の厳しい環境に適応した特徴をもっています。また、繁殖期以外は単独で行動し、夜行性で非常に警戒心が強いため、観察するのが非常に困難です。

「幻の動物」とも称されたユキヒョウの生態を、以下にご紹介してまいります。

「ユキヒョウ」の特徴

ユキヒョウは体長1.0~1.3mで、体重はオス45~55kg・メス35~40kgであり、オスの方がひと回り大きくなります。

毛皮は薄灰色からクリームがかったスモークグレイで、冬にはより白っぽくなり、脇腹にある黒色で縁取られた大きな梅花状の斑点が特徴的です。耳介の縁は黒色で、背骨に沿うように黒色の線が1本あり、頭部と脚の下部には黒っぽい斑点があります。

夏毛は短く脇腹で約2.5cm、腹部と尾は約5cmです。一方、冬毛は背中が3~5.5cm・脇腹は約5cm・尾で約6cm・腹部は約12cmにもなり、全体に羊毛状の下毛が豊富になります。

長さ80~100cmの太い尾は、岩場でバランスをとったり、体に巻きつけて寒さから身を守ったりするのに役立ちます。

四肢は筋肉質で、掌は大きく接地面が広いため積雪や岩場での移動に適しており、肉球があり音を立てずに獲物に近づくことができるため好都合です。また、四肢のかぎ爪はひっこめることができ、獲物を狩る時に力を発揮します。

目は頭部の前面にあるため獲物を立体視でき、網膜には光を増幅する仕組みがあるので夜間でも獲物を見つけることが可能です。

このように、ユキヒョウは足場が悪く冬季の寒さが厳しい山岳地帯で、獲物を狩って生きていくために適応した特徴をもっています。

「ユキヒョウ」の食性

ユキヒョウの獲物は生息地にもよりますが、主にバーラル、ヒマラヤタール、マーコール、シベリアアイベックス、マーモット、ナキウサギなどの草食獣です。ユキヒョウの縄張りの広さはエサ動物の豊かさに依存し、エサの豊富な地域では狭く、少ない地域では広くなっています。

狩りのスタイルは、襲うのに有利な傾斜面の高い位置で待ち伏せして、獲物に狙いを定めて岩の急斜面を一気に駆け下る方法で、体重の3倍もある獲物をたおすことも可能です。

狩りに成功すると、骨以外のすべてを食べきるまで獲物の近くにとどまり、カラスやハゲワシに横取りされないように岩陰などに獲物を隠します。体重40~60㎏のバーラル1頭は3~5日間の食糧になりますが、2頭の子を連れた母親にとっては約2日分の餌量です。

ユキヒョウは、家畜のヒツジ・ウシ・ウマなどを襲うこともあるため、人との軋轢が問題となっています。

「ユキヒョウ」の繁殖

ユキヒョウの繁殖期は1月~3月で、メスは100日程度の妊娠期間を経てふつう2~3頭の子どもを出産します。母親は自分の毛を敷きつめて出産にそなえますが、野生での出産場所は洞窟、岩の割れ目や樹木の洞などです。

出産直後の子どもは体重500g前後・体長23cmほどで、厚い羊毛状の毛でおおわれ、はっきりとした斑紋があります。誕生時に目は閉じており、開くのは生後約1週齢です。

生後すぐの赤ちゃんは「グェー」と低い声を出しますが、この低い声が聞かれるのは短期間で、じきに「ピーヨ」と鳥がさえずるように鳴くようになります。

母親が子どもの世話のために、巣穴やその近くで一緒に過ごすのは出産後1週間ほどです。子どもの体重はこの間に300~500g増加し、生後2ヶ月齢で約4kgになります。

子どもが固形物を食べ始め離乳するのは、生後2ヶ月ごろです。生後2~4ヶ月齢で子どもは母親の狩りについて行くようになります。生後1年間は母親と一緒に狩りを行い、一人前になるのは生後約18ヶ月齢です。

飼育下の場合は2~3歳で性成熟し、長寿記録としては米国インディアナ州のコロンビアパーク動物園で死亡した個体(メス)の21歳2ヶ月があります。

「ユキヒョウ」の分布・生息地

茶色…生息している地域
ピンク色…季節によっては生息可能性がある地域
出典:IUCN Red List「Snow Leopard

ユキヒョウの分布域は、中央アジアのアフガニスタン東部・インド北部・ウズベキスタン東部・カザフスタン東部・キルギス・タジキスタンに広がっています。

ユキヒョウの生息地は、ヒマラヤ山脈・天山山脈・アルタイ山脈・ヒンズークシ山脈などの標高600~6,000mにある険しい岩場や断崖・草原・樹高の低い針葉樹林などです。

夏期には3,500~6,000m近い植物限界線よりも高いところで暮らし、冬期は獲物の移動とともに1,800~1,200mくらいまで降りてくるという季節移動が確認されています。

生息域は広大でも生息密度は非常に低く、個体数は推定で2,710~3,386頭(成獣)です。

生息域が断崖や岩場などの高山地帯であり、繁殖期以外は単独で行動し夜行性で非常に警戒心が強いため、ユキヒョウを目視で確認することは容易ではありません。

生息数を把握するのは非常に困難ですが、近年では自動撮影機器やGPS発信機などの発達により、新しい生息情報が追加・更新されています。

ブータン政府が2022~2023年に実施した調査の結果、134頭の野生のユキヒョウが国内に生息していることが確認されました。また、現存する世界のユキヒョウのうち4分の1が生息している中国では、2023年の青海省における生息数は約1,200頭と公表されています。

新しく生息数が把握されても野生下でユキヒョウの数が増えているわけではなく、適切な保全策を講じるためには生息域と生息数の把握は大変重要です。

「ユキヒョウ」が絶滅危惧種となった理由

ユキヒョウは、IUCN(国際自然保護連合)レッドリストでVU(vulnerable:危急種)に掲載されている希少種です。生息地や生息数が減少し絶滅のリスクに直面していますが、気候変動の影響を受けやすい高山地帯を主な生息地としているため、絶滅の不安が高まっています。

ユキヒョウが減少した理由は、生息環境の減少・害獣としての駆除・密猟・気候変動の主に4つです。以下にそれぞれ説明していきます。

開発や放牧地の拡大などによる生息環境の減少

過剰な家畜の放牧や開発により、餌動物である野生の草食動物が減少するなどユキヒョウの生息に適した環境が狭められていることが原因の一つです。

もともと放牧を生業としてきた遊牧民には、自然と調和しながら生きる「伝統知」がありました。家畜が襲われたとしても駆除するのではなく、命の需要と供給のバランスを大切にし、生態系維持の象徴としてユキヒョウを崇めてきたといわれています。

しかし、社会主義体制が崩壊し資本主義や自由経済の考えが広まるなか、遊牧民の生活は一変しました。例えば、カシミアを増産するためにヤギを過放牧するなど、経済発展の一方で伝統知の継承が薄れ、自然環境への悪影響が生じているのです。

さらに、ユーラシア大陸内陸部では過去30年で年間平均気温は2.1度上昇しており、広範囲で乾燥化と砂漠化が広がっています。放牧地として長く使われてきた低標高の草地が牧畜に適さなくなれば、より植生が豊富な標高の高いところへと放牧地を移さざるをえません。

家畜のための放牧地が増えれば、野生の草食動物が餌を十分に確保できる草地が減少し、ユキヒョウの餌動物が減ってしまいます。また、ユキヒョウの生息地を分断する形で放牧地や人の居住地が入りこめば、ますますユキヒョウの生息や繁殖が難しくなるでしょう。

そのような状況で、ユキヒョウが家畜を襲うようになるのは当然のなりゆきかもしれません。

家畜を襲う害獣としての駆除

ネパールでのある調査では、ユキヒョウの餌のほぼ半分が家畜であることが明らかになりました。ネパールでは、ユキヒョウの生息地全体で家畜被害が生じていますが、一晩で100頭の家畜が犠牲となる場合もあり地域社会の大きな経済的損失につながっています。

ヒツジやヤギなどの家畜を放牧し毛織物の生産を生業とする住民が多い地域では、ユキヒョウは大切な家畜を襲う厄介者です。オオカミやヒグマによる被害も多発しており、住民が野生動物に対し強い憎しみの感情を抱き、駆除などの報復につながるケースも生じています。

地域住民が安心して最低限の生活を送ることができる見通しがなければ、ユキヒョウ保全への理解を得ることは難しいでしょう。

毛皮を狙った密猟

ユキヒョウに対する大きな脅威は、密猟です。

国際市場では、ユキヒョウの美しい毛皮や薬の原料とされる骨の需要が高く、高額で取引されることから違法な取引が後を絶ちません。ワシントン条約で禁止されているにも関わらず、取り締まりの目を盗んで密猟が続いています。

密猟の取り締まりはレンジャーが担っている場合もありますが、高標高の国境地帯である場合が多く、危険を伴う反面賃金は十分ではありません。

生息地においては密猟を、国際市場においては闇取引を取り締まる体制を、さらに強化することが必要です。

野生化したペットの影響

チベット高原では、飼育放棄されたチベット犬(チベタン・マスティフ)が野犬の群れとなり、餌を奪うなどしてユキヒョウとの競合が生じています。

チベット犬は体高約70cm・体重約70kgに達する大型犬で、もともとはチベットでオオカミなどの外敵から家畜を守る犬として飼育されてきた犬種です。2000年代初めからペットとして人気を得て、2014年には記録的な高値がつけられました。

その後ブームが去るとブリーダーが数千匹を放棄したため、今や野犬化したチベット犬は数万匹となり、群れで家畜を襲うなど被害を起こしています。

ユキヒョウの生息に対してチベット犬がどのように影響しているか、科学的なデータはありません。しかし、ともに草食動物を餌にしている点で競合し、単独行動のユキヒョウに対し群れで行動するチベット犬は有利であると想像でき、迷惑な存在であることは間違いないでしょう。

野生化したペットが希少種の脅威となるケースは多々ありますが、生態系のトップに位置するユキヒョウも例外ではないようです。

「ユキヒョウ」の保護の取り組み

ユキヒョウが生息するそれぞれの国において保護区が設置され、生息環境の保全がはかられていますが、国際的な違法取引が問題となっているため国境を越えた保全策も必要です。

ユキヒョウは希少種保護の国際的な取り決めである「ワシントン条約」(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)で付属書Iに掲載されています。
商業目的のための国際取引は全面的に禁止され、学術目的の取引には輸出入国双方の政府が発行する許可証が必要です。

さらに、地域に根差したユキヒョウ保護の取り組みとして、生息地周辺の住民とユキヒョウとの共存を模索するWWF(世界自然保護基金)の活動をご紹介していきます。

ユキヒョウによる家畜被害を防ぐための支援

インド北部のラダックでは、家畜への被害を抑えるための設備導入が実施され、保全活動への理解を促す努力がなされています。

WWFは、家畜などへの被害を強く受けている地域住民をはじめ、野生生物保護局・野生生物保護に取組む団体など、多くの利害関係者と対話を重ねてきました。連携する努力を続けた結果、相互理解と信頼関係の構築、被害緩和策の計画策定や実現につながっています。

実際に野生動物の侵入を検知し、音や光を使って撃退する自動システムを家畜小屋などに設置することで、ユキヒョウ、オオカミ、ヒグマに対する効果が確認されました。

ユキヒョウによる家畜への被害が軽減されれば、ユキヒョウ保全に対するコミュニティの理解や協力を得やすくなることが期待されます。

放牧地の持続可能な管理

地域コミュニティが、持続可能な放牧地の管理を実現させるためには、検討段階からの地域住民の参加が欠かせません。

そこで、多様な年齢層からなる男女の地域住民が参加し、住民が放牧地の持続可能な管理に取り組むためには何が必要なのか検討しました。気候変動の影響など地域が直面する課題とその解決について議論し、地域の人たちが重要と考えるポイントを共有したことで、具体的な手段の確立につながっています。

また、主に放牧で生計を立て、ユキヒョウなどによる家畜被害を受けている地域において、家畜の数や自然資源の利用の現状を把握するためのインタビュー調査が行われました。

調査の結果、家畜の飼育状況のほか、野生動物の保全や自然資源の利用についてコミュニティの人々がどのように認識しているかが明らかになっています。同時に地域の植物相や動物相に関する伝統的な知識も共有され、放牧地の生態系を理解する一助となりました。

今後、このような協議を継続し他地域のコミュニティにも広げていくとしています。

ユキヒョウ生息地域の人材育成

地域コミュニティの人々が直接自然保護活動に参加することは大変重要であるため、ユキヒョウの保全活動に参加する若い住民を募り「マウンテン・ガーディアン」が組織されました。

また、「マウンテン・ガーディアン」と連携した形で、若者世代が調査スキルや獣害防除設備の扱い方を身につけるための支援がなされています。

さらに、学生や学校教員を対象に、ユキヒョウ保護や持続可能な資源利用に関する認識を高めてもらうため普及啓発プログラムが実施されました。

また、国際的な環境イベント「アースアワー」・国際生物多様性デー・世界渡り鳥の日にも、地域の組織と協力しながら、イベントが開催されています。

エコツーリズムの促進

ユキヒョウの生息地周辺の集落にあるカフェや宿泊施設は、国内外の観光客に向けて地域の自然や野生動物に関する正しい理解を広げていく、重要な発信の拠点です。

WWFインドでは、環境にやさしいカフェや宿泊施設の展開など、エコツーリズムのモデルとなる事例を確立することを目指し、ラダックの宿泊施設を対象に現状調査を行いました。

調査結果から運営上の課題などが明らかとなったため、接客サービスのルールや在庫管理・価格設定・料理のレシピなどさまざまな研修やトレーニングが実施されています。

大手の観光業者ではなく、地域の人々による環境に配慮したエコツーリズムの実現が目標です。

科学的調査と知見の収集

ユキヒョウの生息状況調査は、適切な保全計画を策定するために欠かせないものです。

WWFは、肉食動物と獲物となる草食動物に関して、これまでに確立された調査手法を基に、地域の団体やボランティアなどと連携してさらに調査研究を継続するとしています。

生息密度の調査対象となる野生動物は、ユキヒョウ、オオカミ、チベットスナギツネ、マヌルネコなどが候補です。

ユキヒョウの個体数や生息密度を推定するためのカメラトラップ等を用いた調査などにより、さらに実効性のあるユキヒョウの保全策につながることが期待されます。

私たちにできること

ユキヒョウは遠く離れたアジアの高山地帯に生息する生きものですが、ユキヒョウの危機と私たちの暮らしは大気を通してつながっています。

ユキヒョウの生息地は、雪をたたえる高山地帯でありユーラシア大陸の給水塔ともいえる場所ですが、世界的な気候変動がこの地域の環境にも影響を及ぼしているのです。

この気候変動の原因である二酸化炭素などの温室効果ガスは、私たちの暮らしから生じているという事実は心に留めておくべきでしょう。地球温暖化を防止するための行動は、どんなに小さなことでも、一人ひとりの意識が変われば大きな力となります。

また、豊富な草食動物が生息し、ユキヒョウが存続できる生態系を守ることは、中央アジアにすむ何十億もの人々の水を守ることにもつながるのです。

さらに、平和を願い続け行動を起こすことも、希少種保護と無関係ではありません。ロシア国境地帯に広がる山脈群一帯のユキヒョウ調査を担っていたWWF(世界自然保護基金)ロシアは、2023年6月にWWFネットワークから離脱してしまいました。

民族間・国家間の争いが野生生物の危機的状況をさらに悪化させている状況を考えれば、平和な世の中が絶滅危惧種を救うためにも欠かせないといえるでしょう。

国内外でユキヒョウの保護活動をしている団体に寄付をしたり、活動に参加したりすることも考えられます。日本語のページもあるので、ぜひご覧になってみてください。

さらに、国内の動物園ではユキヒョウの繁殖に成功している例もあり、現在9か所で18頭が飼育されています(2023年末現在)。魅力あふれるユキヒョウの姿を間近で実際に見て、生態を学ぶのに動物園は最適な場所です。

ユキヒョウを飼育している動物園は次のとおりですが、最新情報はそれぞれの公式サイトでご確認ください。

ユキヒョウに関心をもち情報を得ることも、ユキヒョウを守るための一歩といえます。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。