絶滅危惧種 PR

【オランウータン】特徴や生息地・保護の取り組みを紹介

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「オランウータンはサルの仲間?」

「オランウータンって人間に近い生きもの?」

「野生のボルネオオランウータンはどこにいるの?」

オランウータンは、アジアで唯一の大型類人猿です。

類人猿とは、現生種ではゴリラ・チンパンジー・ボノボ・オランウータンおよびテナガザル類で、ヒトに最も近縁な霊長類をさします。

オラウータンは、かつて東南アジアの島々とインドシナに広く分布していたと考えられていますが、現在の生息地はボルネオ島とスマトラ島の熱帯林だけです。

オランウータンは、ボルネオ島に生息するボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus)と、スマトラ島に生息するスマトラオランウータン(Pongo abelii)の二種に分類されています。

かつてこの二種は、同じ種の亜種であると考えられていましたが、1996年に遺伝子研究により別種であることが明らかになりました。さらに、2017年にはタパヌリオランウータンが別種として発表されています。

三種のオランウータンはとてもよく似ており、外見や生態に違いはほとんどありません。この記事では特にボルネオオランウータンについて解説していきます。

「ボルネオオランウータン」とは

ボルネオオランウータンは、哺乳綱霊長目ヒト科オランウータン属に分類される動物です。

「オランウータン」はマレー語で「森の人」という意味であり、ボルネオオランウータンはボルネオ島の熱帯雨林にくらしています。

オランウータンの生息する自然豊かで生物多様性に富む熱帯林が減少するのにともなって、オランウータンも生息範囲を狭められてきました。

ボルネオオランウータンは他の二種と同様に深刻な絶滅の危機にあり、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでCR(Critically Endangered:近絶滅危惧)に掲載されています。

ここでは、熱帯林の象徴的な生きものであるボルネオオランウータンの特徴や生態について解説していきます。

「ボルネオオランウータン」の特徴

ボルネオオランウータンの頭胴長はオス96〜97cm・メス72〜85cm、体重はオス30〜65kg・メス30〜45kgで、オスの方が大きくなります。

全身は栗色や赤褐色の長い体毛に覆われ、肩と背中の毛は特に長いですが、顔・耳・手のひら・足の裏には毛はありません。

素肌は、大人では黒く、若い個体では目の周りと鼻がピンク色です。

オスには、のどから胸にぶら下がるのど袋があり、これを膨らませて「ロングコール」と呼ばれる叫び声をだし、縄張りを主張したりメスを呼んだりします。

腕はとても長く、立ち上がると手が地面にほぼ届いてしまうほどです。
オスが両腕を横に広げると指先から指先までの長さは約2mで、身長よりも長くなります。

人間と同じように一頭一頭異なる指紋をもち、尻尾はなく、歯は32本です。大人のオスは口ひげとあごひげを生やしています。

成熟したオスには二つのタイプが知られており、その一つは優位なオスである「フランジオス」と呼ばれるタイプです。

フランジオスは、ほほの肉ひだ(フランジ)を大きく発達させるため、とても特徴的な顔になりメスをひきつけます。

もう一つは、成熟しても肉ひだが発達しない劣位のオス、「アンフランジオス」です。

フランジオスとアンフランジオスは体格が大きく異なり、フランジオスはより大きく、体重60〜85kgほどになります。

このように、ボルネオオランウータンは人間と同じ部分もありますが、成熟した優位なオスの体型に特徴がみられる生きものなのです。

「ボルネオオランウータン」の暮らし

ボルネオオランウータンは、生活のほとんどを熱帯雨林の樹の上で過ごし、大人のオス以外は基本的に地面に降りません。

ボルネオオランウータンの長い腕は、樹木にぶら下がり、隣の木に手が届くまで体を揺すって移動するのに最適です。

木から木へと渡りながら広い範囲をゆっくり移動して、日中にエサを探します。

果実や木の葉、樹皮などを採食して1日のほとんどの時間をすごすのは、数十mにもなる樹の上です。

また、夜は毎日違った場所に木の枝を織り込んだゆりかごのようなベッドを作り、その中で夜明けまで眠ります。

雨が多いので、樹木の葉は雨除けのシェルターにもなり便利です。

オスはメスよりも広い行動範囲をもち、森の中を移動する際はゴロゴロという音を出したり、吠えたりして、お互いに関わらないようにしています。
その呼び声は2km離れていても聞こえるほどです。

オランウータンは類人猿の中ではもっとも単独性が強く、グルーミングや遊びなどの社会交渉をする頻度は活動時間の1%以下といわれています。

しかし、完全な単独性ではなく、日中は3〜7頭が一緒に採食をしたり、連れ立って移動したりすることもあるとのことです。

このように樹上生活者であるボルネオオランウータンの暮らしには、広く豊かな森林が欠かせません。

「ボルネオオランウータン」の食性

ボルネオオランウータンの餌の種類は400〜500種類にわたるとされ、なかでも食事の60%を占めているのが果物です。

特に野生のイチジクとドリアンを好み、そのほか葉・新芽・樹皮・蜂蜜・昆虫・鳥の卵も食べます。

時折、意図的に土や小石を食べるのは、食事には含まれないミネラルを供給するためです。

さらに、ボルネオオランウータンは、先住民族と同じように、薬用として地元の植物((ドラセナ カントレー) の葉を利用しています。

木の葉を噛んで石鹸のような泡を作り、それを皮膚に塗り広げると、関節や筋肉の炎症を和らげる効果があるとのことです。

ボルネオオランウータンは食欲旺盛で、たくさん食べることでエネルギー要件を満たしているため、生物相豊かな熱帯雨林の環境に大きく依存しているといえます。

「ボルネオオランウータン」の繁殖

メスが性成熟するのは10歳くらいで、ふつう15歳前後で初めて出産します。

妊娠期間は270日ほどで、1回の出産で生まれるのは1頭だけです。

子どもが3歳ぐらいで離乳するまで母親は子どもを抱いてすごし、子どもが独立するまでの7〜10年間、餌の探し方を教え娘達には子育てのスキルを伝えます。

父親は子育てに協力しません。

オスについては、アンフランジオスへの性成熟は7〜10歳の間で、フランジオスの場合はさらに10年以上かかります。

メスが好むのは、支配的なフランジオスです。

しかし、アンフランジオスも繁殖は可能であり、両者がメスをめぐって争い1時間以上に及ぶ激しい戦いに発展することがあります。

一方、メスは暴力的になることはほとんどありません。

すべての哺乳類の中でボルネオオランウータンは繁殖の間隔が最も長く、約8年です。

ボルネオオランウータンは長寿で寿命は35年ぐらいと考えられ、飼育下では60年生きた例も記録されています。

「ボルネオオランウータン」の分布・生息地

出典:IUCN Red List 「Bornean Orangutan」

ボルネオオランウータンは、世界で三番目に大きな島である赤道直下のボルネオ島に生息しています。

ボルネオオランウータンの生息地は、インドネシア・マレーシア・ブルネイの三か国にまたがる、標高800mまでの低地および丘陵地帯の熱帯雨林です。

また、スマトラ島にはスマトラオランウータン (Pongo abelii) 、 スマトラ島内のバタン・トル地域にはタパヌリオランウータン(P.tapanuliensis)が生息しています。

熱帯林は地球上で最も生物多様性に富む環境の一つであり、オランウータンの生息する熱帯林にも、多くの生きものたちが生活しています。

ボルネオ島を流れるキナバタンガン川は、中流から下流にかけて定期的な増水によって氾濫するため、特に生物多様性豊かな環境です。

ボルネオオランウータンをはじめ、アジアゾウ・テングザル・サイチョウなど、多くの哺乳類や鳥類が生息しています。

ボルネオオランウータンは、餌となる豊富な植物や生活の場である樹木がなければ生きていけません。

熱帯林の伐採は、オランウータンを含む多種多様な生きものに深刻な影響を与えています。

「ボルネオオランウータン」が絶滅危惧種となった理由

ボルネオオランウータンは2016年に国際自然保護連合 (IUCN) によって、レッドリストのランクをCR(Critically Endangered:近絶滅危惧)に引き上げられました。

オランウータンの他の二種であるスマトラオランウータンとタパヌリオランウータンも、同じランクとされています。

個体数密度と地理的範囲からの推定では、ボルネオオランウータンの総個体数は10万4,700頭で、10年前の23万頭、1970年代の30万頭以上から大きく数を減らしました。

また、スマトラボルネオオランウータンとタパヌリボルネオオランウータンの推定個体数は、14,000 頭未満とのことです。

以下に、オランウータンを絶滅の危機に追いやっている理由について説明していきます。

生息地の減少と劣化

野生下のオランウータンを絶滅の危機においやっている最大の脅威は、生息地の喪失です。

オランウータンの生息地である熱帯雨林は、パーム油プランテーションのための伐採・焼き払い・山火事などにより減少しています。

世界自然保護基金(WWF)によると、サッカー場300個分に相当する面積の熱帯雨林が、パーム油生産のために1時間ごとに伐採されている計算になるとのことです。

現在ボルネオ島では、オランウータンの生息地は東北部と西南部に分断されています。

生息地が小さな区画に分断されると、オランウータンの個体群は他の個体群から隔離されてしまうため繁殖がうまくいきません。

さらに、メスは約8年に一度しか出産しないため、自然災害や人為で一旦個体数が減ってしまうと、回復するまでに何年もかかってしまいます。

パーム油は、食料品から化粧品や洗剤などの日用品まで多くの製品の原料であり、私たちの暮らしに欠かせません。

しかし、パーム油産業は、森林破壊・環境の劣化・先住民族の権利侵害などと直接関係していることを、消費者である私たちは知っておくべきでしょう。

山火事

近年多発している大規模な森林火災も、ボルネオオランウータンの生存を脅かす脅威の一つです。

山火事の原因を特定するのは困難ですが、異常気象や熱帯林を農地などへ変えるための火入れなどによるものと考えられています。

熱帯林の土壌は表土が薄く栄養も乏しいため、一度火災に遭うと時間が経っても本来の熱帯林の景観を取り戻すことはありません。

ボルネオオランウータンの餌となる、実をつける樹種は根付くことも生育することもできないのです。

一見豊かに見える河川流域も、実際には森林が減少し、川岸に沿ってわずかに残る程度です。

さらに、残された森林は分断され大型動物は移動が困難になり、人間の居住地へ侵入することで軋轢が生じています。

結果的には、害獣として殺されてしまいかねません。

密猟・密輸

年間2千頭以上のボルネオオランウータンが「ブッシュミート」として狩猟されていると推定されています。

また、ペットとしての違法取引も、ボルネオオランウータンを減少させる原因であり、毎年いろいろな国で密輸が摘発されています。

ワシントン条約によって輸出入の禁止されている動物であるにもかかわらず、違法取引は後を絶ちません。

日本でも、1999年に大阪のペットショップで4頭のオランウータンが売られていたというニュースがありました。

台湾では、1995年から1999年にかけて、約千頭ものオランウータンが違法に輸入されたとの報告があります。

オランウータンの違法取引で売り買いされるのは、たいてい子どもです。子どもを捕えるために母親が殺され、さらに輸送中に多くの子どもは死んでしまいます。

密猟や密輸は明るみに出ることがない場合がほとんどで、オランウータン関連の犯罪のうち有罪判決を受けるのは1%未満とのことです。

ボルネオオランウータンを絶滅の危機から救うためには、徹底した違法取引の取締りが求められますが、そのためには地域住民の生活レベルや意識の向上が必要かもしれません。

「ボルネオオランウータン」の保護の取り組み

ボルネオオランウータンは、「ワシントン条約」(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の付属書Iに掲載されています。

よって、商業目的のための国際取引は全面的に禁止、学術目的の取引には輸出入国双方の政府が発行する許可証が必要です。

また、ボルネオオランウータンの生息地の多くはインドネシア、マレーシア、ブルネイ政府の法律によって保護されています。

しかし、密猟・密輸などの法律違反は、地方政府当局によってほとんど問題として扱われていないようです。

2007年に策定された「オランウータン保護計画」は、保護目標を達成できないまま2017年に10年間の期限切れとなりました。2019年に新たな計画が策定されましたが、その後すぐに政府によって放棄されたといわれています。

一方、オラウータンの危機的未来を改善するために実際に行動しているのが、多くの非営利団体であり、その活動内容は次のようなものです。

  • 生息地の購入
  • 森林再生
  • 安全な森林へのオランウータンの移送
  • オランウータンの保護・リハビリ・野生復帰
  • 違法行為の監視とパトロール
  • 環境教育

オランウータンの生息に適した土地や、生息地同士をつなぐ回廊を作るための土地を購入することで、パーム油プランテーション会社に売却されるのを防ぐことが可能です。

また、森林から種子や苗木を採集して育て、山火事などで消失した森林や植生が劣化した場所に植林して、森林の再生を支援しています。

OFI(Orangutan Foudation International) の森林再生プロジェクトの開始以来、35万本以上の木が植えられ85%以上の生存率を実現していることは注目すべきでしょう。
中には高さ2.5mを超える木もあるとのことです。

生息地を狭められたオランウータンは居場所を失い、ますます人間の近くに生息するようになり軋轢が生じています。

そこで、オランウータンを救出するために実施されるのが、安全な森林地域への移送です。

治療が必要な成獣や救出された全ての子どものオランウータンは、ケアセンターに運ばれ適切な処置を受けています。

リハビリテーションプログラムを経て、一頭でも多く野生復帰させることが理想です。

そして、有人の監視所と定期的な森林パトロールによって、侵入者を追跡し違法行為を阻止することができます。

警備所には消火設備も設置されており、職員は森林火災の最前線として対応するための消火訓練を受けているとのことです。

さらに、地元の高校や大学の生徒たちと定期的に実施するイベントが、地域住民の意識向上に役立っています。

オランウータンの生息地の保全には、地域社会と連携し、持続可能な森林利用と森林管理の決定過程に、地域の参加を促すことが重要です。

一例として、保護区周辺のコミュニティの女性から、ニパヤシの葉で作られた植栽バッグを調達するエコバッグイニシアチブがあげられます。

伐採権者・コミュニティの森林・アブラヤシ農園と協力して、最終的に人間・オランウータン・その他の野生動物の間の紛争のリスクを軽減することを目指しています。

私たちにできること

ここまで、ボルネオオランウータンの特徴・生態・分布域・生息地・絶滅危惧種になった原因などについて、解説してきました。

オランウータンは東南アジアの熱帯林に生息する野生動物ですが、その森と私たちの生活はパーム油でつながっています。

パーム油はアブラヤシの実から抽出されますが、大規模にアブラヤシを栽培するために熱帯林が切り開かれてきました。

現地ではパーム油産業で生計を立てている生産者が多いというのも事実であり、自然環境に配慮しながら持続可能なパーム油を生産・利用していくことが求められています。

持続可能なパーム油生産について認証を行っているのが、RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil)です。

製造・加工・流通過程において、RSPOが定める要求事項を満たしている製品にはRSPOの認証マークを表示することができるので、消費者は商品を選ぶ時の手がかりにできます。

日々の生活の中で何を買うかを選ぶ時、価格だけで決めるのではなく、遠い熱帯林に思いをはせながら納得のいく買い物ができれば良いですね。

ボルネオオランウータンは日本の野生動物ではありませんが、日本国内の動物園では間近で観察することが可能です。

ボルネオオランウータンを飼育している動物園は全国に13か所あります。

最新情報は、それぞれの動物園の公式サイトでご確認ください。

また、国外でボルネオオランウータンの保護活動をしている団体に寄付をしたり、活動に参加したりすることも考えられます。代表的な団体は次のとおりです。

なかでも、持続可能で森林破壊のないパーム油生産に重点を置いているのが次の団体です。

レインフォレスト・アライアンス

ボルネオオランウータンの生態や生息地について関心をもち情報を得ることが、ボルネオオランウータンを絶滅の危機から救う第一歩です。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。