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【スマトラゾウとは】特徴や生息地・絶滅危惧種保護の取り組みを紹介

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「スマトラゾウは、スマトラにいるゾウ?」

「スマトラって、どこなの?」

「スマトラゾウは他のゾウとどう違うの?」

スマトラゾウは、その名の通りインドネシアのスマトラ島にのみ生息するアジアゾウの亜種の1つです。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは最高ランクのCR(Critically Endangered:深刻な危機)に記載されており、野生では非常に高い絶滅の危機に直面しています。

最後まで読んでいただくと、スマトラゾウの特徴・生態・分布域・絶滅危惧種になった理由などについて幅広く知ることができますので、ぜひご覧ください。

スマトラゾウとは

スマトラゾウは、種としてはゾウ(長鼻)目ゾウ科アジアゾウ属に分類されるアジアゾウの中の1亜種です。アジアゾウの亜種としては、スマトラゾウの他にセイロンゾウ・インドゾウが現存し、さらにボルネオゾウを別亜種とする学説があります。

スマトラゾウは、インドネシアのスマトラ島のみに生息し、アジアゾウの中では最も絶滅の危険が高い亜種です。

以下に、スマトラゾウの特徴を説明していきます。

スマトラゾウの特徴

スマトラゾウの大きさは、肩高約1.5〜2.7m、体重はオスが約4〜5t・メスが約2.2〜4tです。体色は濃い灰色から茶色で、皮膚は厚く体毛はまばらに散在しています。

耳はアフリカゾウと比べてかなり小さく、頭は大きく平らです。オス・メス共に牙をもち、オスの牙は2m近くになります。一方、メスの牙は短く外見から確認するのは困難です。

スマトラゾウは外見も生態も他のアジアゾウの亜種との共通点が多いですが、肋骨は20本で他のアジアゾウよりも1本多いという特徴をもっています。

スマトラゾウの食べものと位置づけ

スマトラゾウの食べものは草・枝葉・樹皮・根・果実などです。スマトラゾウは大きい体を維持するために、熱帯林の中を広範囲に動き回って採餌し、排泄することで種子を散布する役割を果たしています。

スマトラゾウは食べものを熱帯林に依存していますが、熱帯林の植物もまた種子散布の面でスマトラゾウに依存しているのです。もしもスマトラ島の森林からゾウがいなくなると、種子を拡散できなくなる樹種が衰退し、その樹種に依存している他の動物にも多大な影響が及ぶ可能性があります。

農作物を荒らして害獣とされることもあるスマトラゾウですが、スマトラ島の生態系の中でなくてはならない存在なのです。

スマトラゾウの子育て

スマトラゾウは、メスとその子どもを中心とした10〜30頭程度の群れで暮らし、群れの中でリーダーとなるのは最高齢のメスです。オスは、成長すると徐々に群れから離れていき、5頭以下の小さな群れを形成することもありますが基本的には単独で行動します。

ゾウの妊娠期間は約22ヵ月であり哺乳動物の中では最長で、一回の出産で生まれるのは1頭です。生後17〜18年で初産を迎える個体が多く、生涯でおよそ7頭の子供を産むとされています。

出産直後の子どもは体高およそ1m・体重は100kg以上です。生後数時間で歩けるようになりますが、一人で草原を歩くには3カ月ほどかかります。授乳期間は3年ほどです。しかし並行して草木も食べ、生後9か月ほど経つと餌の約4割ほどが植物になります。

子育ては群れのメス全員で行い、最も赤ちゃんに関心を示すのは2〜12歳の若いメスです。若いメスは、子どもを見守ったり一緒に遊んだりしながら子育てを学べるほか、子どもの母親はその間休息することができます。

スマトラゾウは、繁殖力の高い生きものとはいえませんが、群れのメス同士で助け合いながら子育てしているのです。

スマトラゾウの分布・生息地

スマトラゾウは、インドネシアのスマトラ島にのみ生息しています。インドネシアは約1万7千もの島からなりますが、スマトラ島は世界で6番目に大きい島で面積は日本の1.3倍です。赤道がスマトラ島のほぼ中央を走り、気候は熱帯で平均気温は25度を超えます。

スマトラゾウがすむのは、世界屈指の生物多様性に富んだ熱帯林です。熱帯林は、スマトラゾウ以外にもトラ・サイ・オランウータンなどの希少な野生生物のすみかであるほか、人間の生活基盤にもなっています。

1930 年代まで、スマトラゾウはスマトラ島全域の海岸地帯~標高2,900mまで分布し、主に低地の森林地帯に生息していました。1985年には40か所以上でスマトラゾウの個体群が確認されていましたが、熱帯林の急速な減少に伴い2005年までに23か所で絶滅しています。

スマトラ島西部からは完全に姿を消し、北部アチェ州には一定数生息していますが個体数の最新情報は十分ではありません。現在、スマトラゾウの推定個体数は約1,700頭あまりとされています。

多くの餌資源と広い生息域を必要とするスマトラゾウにとって、熱帯林の分断と減少は致命的です。

赤色…スマトラゾウの推定分布域
画像引用元:野生の王国群馬サファリパーク

スマトラゾウが絶滅危惧種になった原因

スマトラゾウが絶滅の危機に追いやられた原因は、生息地の減少と劣化です。

1985年以降、ゾウの1世代にあたる25年間で、スマトラ島の森林は半減しました。これは、潜在的なゾウの生息地の69%が失われたことに値し、今も森林の減少は継続中で「世界で最も森林が減少するスピードが速い場所」といわれるほどです。

熱帯林の伐採によりゾウの生息地が狭められるだけでなく、分断されることで生息環境がさらに悪化しています。

熱帯林の伐採

熱帯林が伐採される要因は、製紙企業による植林・アブラヤシのプランテーション・インフラ整備などです。

製紙企業は、アカシアやユーカリといった紙の原料を植林するために大規模に熱帯林を伐採しています。また、アブラヤシのプランテーションはパーム油を生産するためのものです。

コピー用紙・パーム油ともに、日本に住む私たちの生活と密接に結びついた製品といえます。

焼き畑農業による森林破壊も深刻で、政府の度重なる禁止令や取り締まりにも関わらず無くなりません。居住地・道路・水力発電所建設などのインフラ整備のために熱帯林が開発される場合もあります。

人の生活や経済活動のために、世界有数の貴重な熱帯林の伐採が現在も止められないのは、心が痛む現実です。

害獣としての違法捕獲

地域住民とゾウとの軋轢により、毒薬や銃などでゾウが捕獲され殺されてしまう事態も生じています。

スマトラゾウは、熱帯林の消失が原因で生息域が狭められ餌不足の状況で、餌を求めて森林を出ざるを得ません。残された森林の周辺には人家や農地が開発され、人との接触が必然的に増えました。

スマトラゾウは農作物を荒らすだけでなく、家屋を壊し人的被害が出ることもあります。地域住民にとってスマトラゾウは害獣と認識され、自分たちの生活や命を守るためにゾウを殺してしまうのです。

熱帯林の伐採が、農地や居住地へゾウが出現せざるを得ない状況を作り出しています。私たちが日々使う製品も、熱帯林を切り開いた農地から原料を得て作られているかもしれないことを忘れてはならないでしょう。

スマトラゾウの保護の取り組み

スマトラゾウは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでCR(Critically Endangered:深刻な危機)に掲載された希少種です。

また、スマトラゾウは希少種保護の国際的な取り決めである「ワシントン条約」(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)で付属書Iに掲載されています。

よって、商業目的のための国際取引は全面的に禁止、学術目的の取引には輸出入国双方の政府が発行する許可証が必要です。

さらにインドネシア国内では、生物天然資源と生態系の保護に関する法律によりスマトラゾウは保護動物に指定されています。

スマトラゾウを保護するために国・地域住民・NGOなどが協力して進めているのは、次のような取り組みです。

保護区の設置

2004 年、スマトラゾウの生息地を保護するために、リアウ州にテッソニロ国立公園が設立されました。ゾウの生息地として、豊かな森林を保護することは最も重要です。

WWF(国際自然保護基金)は国立公園管理局・林業省・地域の住民と協力しながら、不法な居住や農地開拓によって良質な森林が伐採されないよう取り組んでいます。

また、WWFがインドネシア政府に対し働きかけているのは、違法行為の監視と取り締まりの強化、持続可能な土地利用計画の策定などです。

さらに、製紙企業・パーム油の生産企業などの産業界に対しても、保護価値の高い森林をこれ以上失わせることのないよう強く求めています。

スマトラゾウの保護区を設置しても、違法な森林伐採や保護区外の開発が続く限りは十分な生息域は確保できません。森林の保全には、地域住民や産業界の理解と協力が欠かせないのです。

ゾウのための横断トンネルの建設

スマトラ島縦断高速道路(トランス・スマトラ)の一部区間には、ゾウが通るためのトンネルが設置されています。このトンネルは、道路建設によりゾウの移動ルートが遮断されないよう、国内で初めて作られた動物専用のものです。

トンネルは、2017年に建設が始まり2020年に開通したリアウ州州都のプカンバルから沿岸の都市ドゥマイを結ぶ全長131kmの区間で、5か所に設置されました。

トンネル設置個所の選定には、GPSで記録された建設予定地周辺のゾウの行動データが活用され、最も効果的な場所が選ばれました。

また、他国の前例で実際には使われなかったトンネルの欠点を踏まえて、確実に機能するものになるよう設計されています。

実際にゾウの利用が確認されており、今後もトンネル付近にゾウの好む植物を植えるなどの取組が継続するとのことです。

このトンネルはスマトラゾウ以外の動物にも利用されており、生息地の分断を防ぐ点においてスマトラの生態系保全に役立っています。

居住地への侵入の防止

国立公園管理局はスマトラゾウにGPS発信機を装着することにより、行動範囲を追跡して住民との接触や密猟から保護しようとしています。

スマトラゾウが人家のある地域や農地などに近づこうとした場合、担当者らが駆けつけてゾウを誘導して森に戻るように仕向けることで不測の事態を回避する方針です。

また、生息地周辺のパトロールにゾウを利用する「エレファント・パトロール」が始まっています。その内容は、農業被害を防ぐために捕獲されたゾウを、人の居住地や農地に出てきてしまう野生ゾウを森へと誘導するように、ゾウ使いが訓練したものです。

地域の警備員を採用し訓練されたゾウを使って、実際に野生ゾウを森へ返す活動が成果を出しています。

これらの活動の目的は次の通りです。

  • 集落に出没するゾウと人間の軋轢を緩和する
  • 森林パトロールと監視を通じて、ゾウの重要な生息地における違法行為を減らす
  • ゾウとその生息地の保護の重要性について、地元の人々の意識を高める

ゾウの生息地を守ることと並行して地域住民の生活を守ることも、ゾウを保護する上では重要なことなのです。

私たちにできること

ここまで、スマトラゾウの特徴・生態・分布域・生息地・絶滅危惧種になった原因などについて解説してきました。

動物園ではスマトラゾウを間近で観察することができますが、現在スマトラゾウを飼育している動物園は国内では1園のみです。最新情報は下記公式サイトでご確認ください。

群馬サファリパーク

私たちが使っているコピー用紙、洗剤や食品に使われるパーム油の原料はインドネシアの森林を切り開いて生産されているかもしれません。しかし、次のような認証マークのある商品を選んで買うことで、熱帯林を守ることにつながります。

  • FSC認証マーク:
    森林の生物多様性を守り、地域社会や先住民族、労働者の権利を守りながら適切に生産された製品を表すマーク
  • RSPOマーク:
    地域の人々の生活や自然に配慮し、持続可能な方法で生産されたパーム油を示すマーク

スマトラゾウの保護活動をしている団体に寄付をしたり保護活動に参加したりすることも、スマトラゾウを守る手段の一つです。

スマトラ島の豊かで貴重な熱帯雨林の伐採が食い止められ、スマトラゾウが地域住民と共存していける持続可能な環境が取り戻されることを願わずにはいられません。

スマトラゾウに関心をもち情報を得ることは、スマトラゾウを守るための一歩といえます。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。