絶滅危惧種 PR

【サイガとは】特徴や生息地・絶滅危惧種になった原因を紹介!

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

「サイガはどんな生きもの?」

「サイガはどこにすむ絶滅危惧種?」

サイガは、大きな鼻をもつヤギくらいの大きさの哺乳類で、中央アジア(カザフスタン
・ロシア・ウズベキスタン・モンゴルなど)の草原や砂漠に生息しています。

サイガは密猟などで数を減らし、一時はIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでCR(Critucally Endagered:近絶滅)にランクされるほどの危機に追い込まれました。

しかし、近年生息数が回復し、ランクはNT(Near Threatened:近危急種)に変更されています。

最後まで読んでいただくと、サイガの特徴・生態・生息地・保護活動について広く知ることができますので、ぜひご覧ください。

「サイガ」とは

サイガ (Saiga tatarica) はウシ科サイガ属に分類される偶蹄類で、本種のみでサイガ属を構成しています。別名は、オオハナレイヨウ、オオハナカモシカです。

ひづめの間・目の下・下肢の付け根に臭腺があることなどから、カモシカ類とレイヨウ類の中間的な存在とされています。

サイガは、マンモス・サーベルタイガーを含む氷河期の動物相の名残とされ、冬には氷点下十数度にもなる中央アジアの平原で、何万年も生き続けてきました。

「サイガ」の特徴

サイガは体長108〜150cm、体重はオスで30〜50Kg・メスで21〜40Kgであり、ヤギと同程度の大きさです。

サイガの毛皮は羊毛のように重く、顎から胸にかけて長い房がついています。

夏の間、サイガの体は黄褐色で、顔と鼻の側面の毛皮は白っぽく、臀部・尾部はクリーム色です。 冬には被毛はさらに厚くなり、より淡い色になるため雪原で見つかりにくくなります。

オスだけがもつ角は、約20〜40cmほどの長さで先端がS字状に湾曲し、前面に節があり、黄色く半透明です。この角が薬用になると信じられ、密猟の対象となってきました。

サイガ最大の特徴は、顔の大部分を覆う大きな鼻です。柔らかくゾウの鼻を縮めたような形で、よく動き、嗅覚にも優れています。

複雑なサイガの鼻腔はクジラに似ており、冷たく乾燥した空気を温めて湿らせるのに適した構造です。凍てつく冬の気温では吸い込んだ空気を温め、暑く乾燥した夏はホコリを除去して空気を濾過するのに役立ちます。

また、オスのサイガは鼻から大きな唸り声を発して体の大きさを誇示し、メスの気を引こうとするなど、コミュニケーションにも鼻を利用していると考えられています。

サイガを特徴づけるユニークな鼻は、厳しい乾燥地帯の自然環境に適応進化してきた結果なのです。

「サイガ」の暮らし

サイガは世界で最も過酷な土地に生息し、エサを求めて季節ごとに長距離移動します。何千頭ものサイガが群れとなる季節移動は、世界で最も壮観な渡りの一つです。サイガは時速80kmで走ることができ、1日で80〜120kmの距離を移動できます。

季節移動の後は、小さな群れに分かれて暮らします。天敵は、オオカミやキツネ、ワシなどの肉食動物で、特に生まれたばかりの子どもは狙われやすいです。サイガは危険に敏感で、危険の兆候を察知するとすぐに一斉に群れを分散させます。

サイガは植物食で、イネ科植物や地衣類、低木などを食べます。昼行性ですが、夏の間は比較的涼しい朝と夕方にエサを探し、暑くて日差しが強い昼の間は休むことが多いようです。

サイガの存続には豊富なエサと豊かな植生が欠かせませんが、同時にサイガは植物の種子を散布し草原の多様性維持に大きく貢献しています。

「サイガ」の繁殖

サイガは、繁殖期にオス同士がメスをめぐって激しく争います。

まず鼻から大きなうなり声を上げ、自分の大きさや強さを主張し、相手のオスが引かない場合はツノを使って戦い、どちらかが死んでしまうまで争うこともあるほどです。

争いに勝ったオスは、5〜15頭のメスを率いてハーレムを作ります。しかし、ハーレムを率いるオスはメスを獲得するために力をほとんど使い果たしているため、繁殖期の後にオスが大量に死亡するそうです。

メスは139〜152日の妊娠期間を経て、4月下旬から5月に2〜3頭の子どもを出産します。出産直後の子どもは体重約3.5kgです。生後1週間前後で草を食べるようになり、生後約4か月で乳離れします。

メスは生後わずか1年あまりで生殖可能な状態となるため、毎年2〜3頭の子どもを産むとすると、平均寿命の10年間に残す子孫の数は合計20頭前後です。サイガは、絶滅危惧種ではありますが、繁殖力旺盛な動物ともいえます。

「サイガ」の分布・生息地

出典:IUCN Red List of Threatened Species:Saiga

サイガの生息環境は、中央アジア(カザフスタン、ロシア、ウズベキスタン、モンゴルなど)の寒帯にあるステップや疎林などです。乾燥した草原や砂漠、植生がまばらな開けた場所など、捕食者から素早く逃げることができる環境を好みます。

以前は、イギリスも含めたヨーロッパからカムチャッカ半島・アラスカまで、世界中の広範囲に分布していたようです。

しかし現在の生息地は、ロシア・ウズベキスタン・カザフスタン・トルクメニスタン・モンゴルの限られた地域となっており、生息域はさらに縮小しています。

1990年代の初め頃までは数十万頭が生息していたとされますが、2003年時点での個体数は最も多かった時代の6%まで減少しました。

「サイガ」が絶滅危惧種となった理由

過去にサイガは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅寸前のランクである「CR(近絶滅種)」とされるほどの危機に追い込まれました。絶滅危惧種となった原因には、密猟・生息地の縮小・感染症・気候変動などがあげられます。

現在サイガの生息数は回復傾向ですが、生息数減少の原因が取り除かれたわけではありません。サイガの生息域や生息数を減少させている要因について、それぞれ説明していきます。

密猟

サイガの角は薬用になると信じられ、漢方薬の原料とする目的で乱獲されています。

日本でも、犀角(サイの角)の代替品としてサイガの角「羚羊角」が長年使われていました。サイガの角も2019年から商業目的での輸出入が禁止されましたが、規制前の在庫と偽って、密猟されたサイガの角が取引される可能性はあります。

また、肉が食用とされ、毛皮が利用されることも密猟の一因です。かつて旧ソビエト連邦では狩猟が禁止され、管理された一部の個体のみ狩猟が許可されていました。

しかし、ソビエト連邦崩壊後に農村経済が崩壊し失業と貧困が蔓延すると、法的な規制が行き届かなくなったこともあり、食料源・収入源としてサイガの密猟が横行してしまいます。

密猟を根絶するためには、違法に捕獲し収入を得ようとする供給側の取り締まりだけでなく、入手しようとする需要側の規制も必要です。

生息地の劣化

サイガの生息域は、1950年から2012年までに約8割が失われました。

開発による生息地の破壊だけでなく、フェンス・道路・線路・パイプラインなど移動の障壁となるインフラ整備が生息地を分断し、サイガの存続を危うくさせています。季節移動を妨げられれば、サイガの群れは条件の整った餌場や繁殖地にたどり着けないからです。

また、家畜の放牧の増加により、サイガの食べる植物が生育を妨げられたり、採食場所が奪われたりする問題が発生しています。

さらに、気候変動にともなう植生の変化や水不足などにより、生息に適した環境がさらに減少する可能性も否定できません。

感染症

2015年に世界の生息数の半分以上にあたる20万頭以上のサイガが大量死した原因は、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)血清型Bという細菌による出血性敗血症だったことが明らかになりました。

パスツレラ菌は、サイガの大きな鼻に常に存在している常在菌とされています。しかし、例年にない高温多湿の気候が続いたことで異常に増殖し、サイガが抵抗しきれず死に至ったのではないかというのが、研究者の見解です。

サイガの特徴的な鼻に昔から生息していた微生物が、気候変動という引き金によって病原性を発揮し、大量死を引き起こしたと考えられます。

気候変動

気候変動は、異常気象・生息環境の劣化・病原菌の増殖などを引き起こし、間接的にサイガの生息数減少の要因となっています。

モンゴルでは、2001〜02年にかけて冬季に厳しい寒波が訪れた結果、積雪による移動困難や食糧の不足などによって80%のサイガが死亡しました。2003年のモンゴルでの調査によると、推定個体数は750頭でした。

地球温暖化による気候変動は、絶滅の危機にある野生動物の存続にも影響を及ぼしているのです。

「サイガ」の保護の取り組み

2023年12月、国際自然保護連合(IUCN)はサイガのレッドリストの分類を「近絶滅種(Critically Endangered)」から「近危急種(Near Threatened)」に変更しました。最新の推定によれば、ユーラシア大陸には190万頭のサイガが生息しているとされています。

サイガの生息数回復は、生息地での保護施策や国際的な枠組みの構築による一定の成果といえるでしょう。

1995年以降、サイガの国際取引は絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約 (CITES) に基づいて禁止されています。

さらに、2006年には、サイガが生息する国、サイガを原料とする製品を伝統的に消費してきた国、米国をはじめとする関係国が協力して捕獲制限に関する覚書を交わしました。

自然保護団体やNGO、研究者を中心にサイガを保護しようという国際的な動きが高まっています。以下に、生息地での取組事例をご紹介します。

カザフスタンでの取り組み

カザフスタンでのサイガの生息数は、2003年に推定2万頭で絶滅寸前でしたが、劇的な復活を遂げています。

ソ連時代から密猟対策は講じられており、1920年代には密猟はほとんど行われなくなりました。1950年代の調査によると生息数は約100万強でしたが、その後、サイガの狩猟が再び始まると生息数が激減したため、カザフスタンは国をあげての保護に取り組んでいます。

カザフスタン政府は複数の生息地、合計約4万8千㎢をサイガ保護区に指定しました。これは九州の約1.2倍に相当する広さです。また、密猟取り締まりの強化に力を入れ、税関では密輸されるサイガ製品の摘発を強化しています。

こうした対策が功を奏し、サイガの生息数は2021年に80万頭にまで回復しました。保護区の職員によれば、サイガの生息数が増えるとともに生息地が北部へと広がっているとのことです。

モンゴルでの取り組み

カザフスタンと並びサイガの重要な生息地が残るモンゴルでは、WWFが2007年から調査や保護に携わり日本からの支援が役立てられてきました。

調査による推定値では、モンゴル国内のサイガは1998年に3千頭足らずでしたが、2010年には約8千頭、2011年には約1万頭と増えています。

保護活動の目標は、現在の生息地の維持・生息環境の改善・サイガが姿を消した地域への生息範囲の拡大などで、具体的な活動内容は次のとおりです。

  • 密猟パトロールのための人材をトレーニングし密猟対策を強化するとともに、法律が適正に執行されるようにする
  • 子どもたちにマンガなどを用いた教育活動を行なうなど、住人への普及活動により保護プロジェクトへの理解と協力を得る
  • 地域住民の理解と協力により、家畜用の牧草地とサイガの生息地のすみ分けを行い、家畜と野生生物が共存できる牧草管理の仕組みを導入する
  • サイガの生息地の28%をカバーする保護区(2か所)を設置する

保護プロジェクトの実施により近年は密猟が急減し、サイガの個体数に確実な増加傾向が見られています。

私たちにできること

サイガは日本の野生動物ではなく、サイガを飼育している動物園は現時点では国内にありません。

日本ではサイガの角が漢方薬の原料として利用されてことがあり、需要側として密猟と無関係とは言い切れません。「野生動物の違法取引は許されない」ことを意識するとともに、周囲にも広めていくことが大切でしょう。

また、国外でサイガの保護活動をしている団体に寄付をしたり、活動に参加したりすることも考えられます。代表的な団体は次のとおりです。

サイガの違法取引が一日でも早く根絶されるとともに、生息環境が改善されることを願ってやみません。

サイガの生態や生息地について関心をもち情報を得ることが、サイガを絶滅の危機から救う第一歩です。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。