ヨーロッパ人がはじめてニューイングランドの土を踏んだ時、この鳥の数の多さに驚いたことでしょう。
ニューイングランドソウゲンライチョウはリョコウバトと同じく、人の無計画な乱獲によって滅んだ鳥です。
彼らの絶滅までの道は、いくつもの不幸な偶然が繋がって出来上がったものだったのです。
「ニューイングランドソウゲンライチョウ」とは
身体的特徴
体長は約40㎝で、キジやヤマドリと同じくらいの大きさでした。
くっきりとした縞模様が美しく、オスには目の上に明るいオレンジ色のトサカと、首にも同じ色の袋がついていました。
求愛行動の際にはこの首の袋を使って音を出し、体を膨らませてメスを誘っていました。
メスの方はオスよりも少し小さく、目立つ色合いではありませんでした。
生態的特徴
草食の鳥で、クローバーなどの草のほかに木の実や果実などを好んで食べていました。
地上に巣をつくって子育てを行い、中でもメスは母性愛が強かったそうです。
この子を思う母の心は、のちに彼らの絶滅を後押ししてしまうことになります。
「ニューイングランドソウゲンライチョウ」の分布・生息地
その名の通り、アメリカ合衆国東部のニューイングランド地方に生息していました。
また、彼らはその別名を「ヒースヘン」と言いますが、これはヒースの生い茂る荒れ地を好んで生活していたところからきています。
「ニューイングランドソウゲンライチョウ」の絶滅した原因
ヨーロッパからやってきた移民は、食料確保のために彼らを乱獲し始めました。
繁殖期もお構いなしに撃ち殺すだけに留まらず、彼らの暮らす森を農場へと変えていきました。
移民と一緒にやってきた猫も、地上の巣の中のひな鳥を容赦なく食い尽くしていきました。
そのため、1870年には、ニューイングランドソウゲンライチョウは世界にたった200羽を残すのみになってしまったのです。
生き残った彼らが暮らすブドウ園は保護区域とされたため、1916年には2000羽にまで回復しましたが、またしても不幸に見舞われてしまいます。
ブドウ園が火事になり、多くのニューイングランドソウゲンライチョウが焼け死にました。
ひな鳥を守っていたメスは火にまかれても逃げようとせず、生き残ったのはたったの105羽だったそうです。
そしてそこから何とか600羽まで数を増やしたものの、島にやってきた七面鳥の持っていた伝染病が彼らを襲い、1928年にはただ一羽のオスが残るだけになりました。
数多の困難を乗り越えた彼らでしたが、1932年3月11日、「ブーミング・ベン」と呼ばれた最後の一羽が死んだことで、この地球から完全に姿を消してしまったのです。
「ニューイングランドソウゲンライチョウ」の生き残りの可能性
1932年以降目撃情報もないことから、完全に絶滅してしまっていると考えるのが妥当でしょう。
まとめ
人間の乱獲にも負けなかったタフな鳥も、度重なる不運には勝てなかったようです。
一時は観光の目玉とも言われた求愛のダンスを、是非見てみたかったと残念でなりません。