ジャイアントモアとは
ジャイアントモアの目撃情報は現在においても度々報告されていますが、それらのほとんどが信憑性の欠けたものとなっています。
しかし、この鳥が存在していたことは、ロンドンやニュージーランドの博物館に身体の一部が保管されていることにも明らかです。
ジャイアントモアは15世紀に絶滅したと一般的に考えられています。
それでもなお、鳥類のなかで世界最大のおおきさを誇る巨鳥ジャイアントモアについて多くの人たちが今もなお注目しているのです。
以下、ジャイアントモアについて詳しく解説していきます。
属性
ジャイアントモアは鳥類ダチョウ目モア科に属しています。
祖先
モアの祖先に関する明確な情報は未だ発表されていません。
ゴンドワナ大陸時代の生き物の進化、オーストラリアから飛んできた鳥が祖先だという説もあります。
名前の由来
「モア」の名前の由来として有名な諸説があります。
ヨーロッパ人がジャイアントモアの調査を行うにあたって、マオリ人たちにこの鳥の骨を集めさせた際に、「もっと持ってこい」と英語で伝えると、彼らがそれを鳥の名前と勘違いしました。
そのことが「モア」と呼ばれるきっかけとなりました。
生息地
ジャイアントモアは南半球にあるニュージーランドに生息していました。
この鳥が特に好んだ場所は低木地帯、草原、森でした。
ニュージーランド列島は環太平洋造山帯に属し、北と南の主要な二つの島に加えて、小さな島々によって構成されています。
気候は丁度よく、夏の暑さは激しいものでなく、冬の寒さも厳しいものではありません。
ニュージーランド独特の生態系が形成されました。北島、南島、スチュアート島は太古から大陸から切り離されて孤立状態にあったことが関係します。
かつてのニュージーランドには、こうもり類とくじら類以外の哺乳類は生息していませんでした。こうしたことが、ジャイアントモアが飛べない鳥になったことに関係します。
キーウィやカカポといった鳥たちも羽根を退化させて、ジャイアントモアと同様に陸地を歩いていました。
ジャイアントモアは更新世末期から数百年前にかけて、ニュージーランドに生息していました。
この鳥が生息していた時期には陸生の哺乳類は生息していなかったため、草食哺乳類が占めるはずの生態的な地位をうめるため、この生き物は飛ばない鳥になったのです。
生物は平和な場所で暮らしていると巨体化するといわれています。
ジャイアントモアはポルネシアから移住してきたマオリ族によって絶滅に追いやられてしまいますが、人間がニュージーランドに渡って来るまでは、この場所は比較的平和でした。
ジャイアントモアは天敵の少ない環境のなかで、大地をのしのしと優雅に歩いていたのです。
身長・体重
ジャイアントモアの身長は非常に高いです。
オスとメスで大きさは異なりオスの方が小さく、メスはその1.5倍程あります。
オスはダチョウと同じくらいの大きさで2m程、メスは3m程の大きさでした。メスの体重は約200㎏だといわれています。
しかし、ジャイアントモアのなかには背丈が3.6m程あり、体重が250㎏程あるものもいたといわれています。
ジャイアントモアのなかには、足のサイズだけで2mもあったものもいました。
オスよりもメスの方が身体のサイズが大きい鳥は稀なようです。通常は、オスよりもメスの方が身体のサイズが大きいのです。ジャイアントモアはこの点でも稀だといえます。
この鳥のくちばしも特徴的で、くちばしは長く、その先が曲がっていました。
特徴
ジャイアントモアは羽根をもちません。
羽根があったという痕跡もありません。その代わりに強靭な足腰をもち、時速50キロメートルの速さで走ることができます。
その強い足で敵にキックを加えることもありました。羽根がなく、空を飛ぶことができなくても、身を守るための術は身に付いていたのです。
ジャイアントモアが一度に産む卵の数は2~4個といわれており、この鳥の卵のサイズはダチョウの卵よりもはるかに大きいです。
ダチョウの卵のサイズは18㎝程度ですが、ジャイアントモアの卵のサイズは約24㎝もあったのです。
ジャイアントモアは群れで行動する習性をもっていました。
かれらがメインとして食べていたものは草や果実でした。
ジャイアントモアは飛ばない鳥で、陸地を歩いて暮らしていたため、食事をする際は高い木であっても枝を引っ張って、近くに寄せて、葉や木の実を採って食べていました。
ジャイアントモアにもニワトリと同じように、石を飲み込む習性があります。
石を飲み込む理由は腸の消化を助けるためです。おとなしい気質の鳥たちは敵から身を守る能力に欠けているため、一箇所に留まってゆっくりと食事をすると危険です。
そのため、食べ物を飲み込んだ後、すぐに動けるようにするために、腸のなかに石を溜めておくのです。
ジャイアントモアの寿命は断定できないものの、50年という説もあります。
ジャイアントモアが絶滅した原因
15世紀には既に、ジャイアントモアは絶滅していたといわれています。
その主な原因として5つ挙げられます。
繁殖力の低さ
ジャイアントモアの繁殖力は高くありません。
そのため、子孫を繁栄していくことが難しくなります。
大人になるまで時間がかかる
ロンドン動物学会のサミュエル・ターヴェイらによる研究によると、ジャイアントモアは性成熟するまでに10年近く要するといいます。
その長さはダチョウが1年程度で大人になることを思い出してみても明らかでしょう。
ジャイアントモアが大人になるまでに長年かかることは、この鳥の繁殖力の低さとも関係します。
人間
ポルネシアから移住してきたマオリ族がジャイアントモアを滅ぼしました。
彼らは、ジャイアントモアを乱獲しました。かれらにとってジャイアントモアは主食として恰好の存在だったのです。
また、マオリ族はジャイアントモアの羽毛を羽根飾りとして利用しました。
ジャイアントモアはおとなしいため、マオリ族は乱獲するにあたって好都合でした。
マオリ族のジャイアントモアの狩猟方法として、この鳥が石を飲み込む性質を利用し、焼石を飲み込ませて捕らえていました。
別の方法として、ジャイアントモアの脚を狙った攻撃もありました。ジャイアントモアを地面に倒し、逃げられない状態にしてから捕らえました。
人間の手によってジャイアントモアが次々と捕らえられた原因は、この鳥の性質であるおとなしさだけではありません。
ニュージーランドの陸地には哺乳類動物の生息もなく、敵も少なく、人間が訪れることもなかったため、ジャイアントモアは警戒することを知らなかったのです。
マオリ族の狙いはジャイアントモアのみならず、その卵にもありました。
この民族がジャイアントモアを乱獲していたことは、彼らの貝塚のなかで見つかった多くのモアの骨にも窺えます。
マオリ族がこの地に訪れるまでのジャイアントモアのたった一つともいえる敵は、ハーストイーグルでした。
ハーストイーグルは羽根を拡げると3m程の大きさになったといわれています。
この鳥が巨大化した理由も、敵が少なく、豊穣ゆたかな土地の影響です。
ハーストイーグルはジャイアントモアと共に絶滅したとも言われています。
つまり、ハーストイーグルは獲物がなくなったため、生き延びることができなくなったのです。
自然破壊
森林破壊が原因となり、ジャイアントモアは絶滅に追い込まれたと考えられます。
しかし、この問題もまたマオリ族が関係しています。
マオリ族はニュージーランドに渡ってくると、次々に森を開拓していきました。
マオリ族の移住から間もなくして、森林は伐採され、森はなくなりました。
ジャイアントモアの生き残りの可能性
ジャイアントモアについて絶命の報告はされていません。
目撃情報はいくつかあるものの、そのほとんどが信憑性のないものとなっています。
ここでは、ジャイアントモアの生き残りの可能性を5つ挙げます。
ネット上におけるジャイアントモアを撮影した写真
ジャイアントモアを撮影した写真はインターネット上にいくつもあがっています。
また、ジャイアントモアと共に人がうつりこんでいる比較的新しい写真も見受けられます。
しかし、そのほとんどが合成ないし、加工であり偽物であると考えられます。
1983年、パーディー=フリーニーらによる発見!?
1993年1月、パーディー=フリーニーら三人がジャイアントモアを目撃したと主張しました。
彼らはその時に撮影したジャイアントモアのような鳥の写真を公開しています。しかし、この写真も偽物であるという説が有力です。
1880年、ニュージーランドの南側で発見!?
1880年、海岸近くの砂丘にあるブッシュの下で、巨大な鳥が横たわっている姿を見たこという報告がありました。
ニュージーランドの南側で人がほとんど踏み込んでいない場所でした。
この目撃情報は、上の二つの情報よりも信憑性が高いといえますが、確かなものではありません。
チャード・オーエンによる論文
チャード・オーエンの論文にはクック海峡の島々には生存する可能性があることが記されています。
人間の知らない場所に生息している可能性
科学者たちはニュージーランド以外の未開の島に、ジャイアントモアが生存している可能性が高いと指摘しています。
しかし、調査報告はされていません。
ジャイアントモアを見たという情報はあるものの、信憑性の高いものや、確かな目撃情報はありません。
科学者たちが考えるように、この鳥が未開の島で生息しているという説に期待することになります。
ジャイアントモアと博物館
ここまでみてきたことにも明らかなように、ジャイアントモアと私たちが会える可能性は限りなく低いです。
しかし、ジャイアントモアが伝説の鳥ではないことは博物館がこの鳥の身体の一部を保存していることにも明らかです。
ロンドンの自然博物館ではジャイアントモアの脚が保存されています。加えて、この博物館にはジャイアントモアの全身骨格標本も保存されています。
ニュージーランドにあるオークランド博物館では、ジャイアントモアの剥製が展示されています。