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【フクロオオカミとは】変な特徴を持つ絶滅種!生息地や生存の可能性まとめ

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一見オオカミなのに、カンガルーのようなお腹の袋を持っていて、背中には虎模様があって…

あなたは、こんな特徴を持ったヘンテコな生物を想像できますか?

南半球の島、タスマニア島にいたフクロオオカミはまさにそんな不思議な見た目をしていました。

このフクロオオカミ、驚くべきことにイヌ科のオオカミとは全く別の生物です。

それどころかカンガルーやコアラ、タスマニアデビルの方が近しい存在です。

フクロオオカミは1982年に絶滅宣言が出されています。

その絶滅までの経緯は、人間の悪意に翻弄されたとても痛ましいものでした。

今回はそんなフクロオオカミについて詳しくご紹介していきます。

フクロオオカミとは?

フクロネコ目フクロオオカミ科の肉食の有袋類です。

学名は『Thylacinus cynocephalus』で、一般的に英語ではThylacine(サイラシン)と言います。

オーストラリアの南方に浮かぶタスマニア島に生息していたことから、タスマニアオオカミと呼ばれることもあります。

また、その背の虎模様からタスマニアタイガーという別名もあります。

フクロオオカミ科は9種存在していましたが、1982年のフクロオオカミの絶滅宣言を持ってその全てが絶滅しています。

体形

体長100〜130センチメートル、体重15〜35キログラムと大型犬ほどの体格をしていました。(最近の研究では、実際にはそこまで大きくなく、駆除のために誇張して報道していたという説もあります)

黄みがかった薄茶色の体毛が全身に生えており、背中からしっぽにかけて濃茶色〜黒色の縞模様が入っていました。

しっぽは付け根が太く長くカンガルーによく似ていて、尾だけでも50〜60センチメートルありました。

カンガルーと同様に踵を付けて、しっぽでバランスを取りながら2本脚で立つこともできたと言われています。

その外見や、踵をつけず四足歩行をすることからオオカミやイヌ科の動物に非常によく似ていますが、有胎盤類の彼らとは遺伝的に全く別の生物です。

大きな相違点としては、メスに有袋類特有のポケット状の育児嚢があることです。

フクロオオカミは他の有袋類と同様に子どもを非常に小さく産むため、充分な大きさに成長するまでこの育児嚢で育てました。

タスマニアデビルなどの四足歩行の有袋類と同じく、育児嚢の入口は後方に向いており、乳頭は4つありました。

他にも、イヌ科の動物の歯が12本であるのに対しフクロオオカミは16本と4本も多く、大きく開口する点もオオカミと異なっています。

このように遺伝子的には全く別の種にも関わらず、同じような進化を辿ることを収斂進化といいます。

同じような環境に置かれるとここまで似た動物になるというのはなんだか不思議ですよね。

生活

フクロオオカミはタスマニア島の森の中や岩場でで暮らしていました。

基本的に夜行性なので、昼間は活動せず夕方から夜間にかけて単独で狩りを行っていました。

12〜3月(南半球の夏)の繁殖期になるとペアを組んで行動することもあったようです。

1度の出産で3頭前後を産み、メスはお腹の袋の中で育てます。

3か月程度袋の中で過ごした子どもは、母親とともにその後も9か月一緒に過ごした後独り立ちをしていきました。

かなり古くから人間と接する機会がありましたが、家畜を荒らす害獣とみなされていた彼らの生態は不明瞭なことが多いようです。

食事

肉食なので、主にワラビーや飛べない鳥類などの小型の生き物を食べていました。

草陰に隠れながら間合いを詰めて一息に捕獲したり、獲物を追い回して疲れた所を狙ったりと単独でハンティングをする術に長けていました。

人間がタスマニア島に家畜を連れて移住してきてからはその羊なども襲ったと言われていますが、実際に羊を襲っていたのは野犬だったという説もあります。

この他に人間も襲ったという話もありますが、実際に襲われた記録は残っていません。

後述しますが、フクロオオカミを駆除したい人間たちによる偽情報であった可能性もあります。

フクロオオカミの分布・生息地

タスマニアオオカミの別名にもある通り、オーストラリア南方にあるタスマニア島に生息していました。

タスマニア島以外にもいた!?

絶滅前こそタスマニア島のみを生息地としたフクロオオカミですが、実は大昔にはオーストラリア全域やその周辺諸島にも分布していました。

実際に、4万年以上前からオーストラリアに住んでいた先住民の壁画にフクロオオカミが描かれています。

しかし氷河期の終わりごろにディンゴというタイリクオオカミの亜種がオーストラリアに入ってきて、先住民たちに飼われたり野生化していきました。

このディンゴとフクロオオカミは同じような体格で、狩る獲物も似ていたため生存競争を繰り広げるようになりました。

ディンゴは攻撃的で集団で狩りを行います。

単独で狩りを行う穏やかな気性のフクロオオカミは徐々にその数を減らしていきました。

干ばつなど環境の変化も伴いオーストラリアやニューギニアでは絶滅してしまいます。

約3000年前にはタスマニア島のフクロオオカミが残るのみとなりました。

フクロオオカミはこうして絶滅した

海面上昇のおかげでディンゴが生息地を広げられなかったタスマニア島で、フクロオオカミは絶滅を逃れていました。

しかし1803年にタスマニア島にもヨーロッパ人がやってきます。

その頃羊毛の需要が高く、タスマニア島に入植したヨーロッパ人も多くの羊などの家畜を連れてきました。

そんな入植者たちにとって、肉食のフクロオオカミは目の敵にされました。

射殺や撲殺はもとより、水飲み場に毒をまいたり、殺したものを見せしめにしたりとあまりに非情な最期を迎えたものも多くいたそうです。

更に政府も1988〜1909年に懸賞金をかけて後押しし、フクロオオカミは大量に虐殺されていきます。

人や家畜を襲う害獣とされ、凶悪性を誇張されたり「ハイエナ」と言われるなど人々の心象もあまり良くありませんでした。

一時期はヨーロッパの国々や地元の動物園でも飼育していたようですが、繁殖は進みませんでした。

1930年に野生のフクロオオカミが銃で殺され、これが最後の野生個体かと思われましたが、1933年に再度捕獲されます。

この最後のフクロオオカミはベンジャミンと名付けられ、タスマニア島ホバートのビューマリス動物園で飼育されました。

そして、1936年9月7日にベンジャミンの死亡をもってフクロオオカミは絶滅したとされています。

50年が経った1986年に絶滅宣言が出されました。

大昔から絶滅することが決まっていた!?

1936年に地球上から姿を消したフクロオオカミですが、いずれは絶滅する生き物であったという研究結果が最近発表されしました。

2017年12月発行の「Nature Ecology & Evolution」に掲載されたその論文によると、7〜12万年前にフクロオオカミの遺伝的多様性は激減し、環境の変化などに対応できなくなっていたそうです。

つまり人類がオーストラリアにやってくるよりずっと昔に、すでにフクロオオカミはその数を減らしていたことが考えられるのです。

人が手を加えなくてもいずれは絶滅していたのかもしれませんが、そのスピードを急速に早めたのが私たち人類であることには違いありません。

フクロオオカミの生存の可能性は?

フクロオオカミは1936年以降もオーストラリアのタスマニア州やニューギニアで多くの目撃証言があがっています。

最近では姿を見かけただけでなく、よく似た足跡を発見したというものまであります。

多くの目撃証言があることから調査も何度も行われています。

しかし現在までに生存を裏付けるような結果は得られていません。

現在はゲノム解析が進められ、古生物学者のマイケル・アーチャー氏のチームによって人為的に復活させる試みがされているそうです。

すでにチームでは絶滅したカモノハシガエルのクローン胚作成に成功しており、今後の研究に期待が寄せられています。