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【スティーブンイワサザイとは】生息地や絶滅の原因・生き残りの可能性まとめ

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「スティーブンイワサザイ」とは、かつてニュージーランドの固有種として生息していた「イワサザイ科」の小鳥の1種です。

図鑑に記載されている名前は「スチーフンイワサザイ」とされていたり、和名では「ハシナガイワサザイ」と呼ばれる事もあります。

生息地に連れ込まれた「ある生き物」によって絶滅に追い込まれてしまった小鳥としても有名です。

体長は約10cm前後で夜行性とされており、飛ぶ事ができなかったと言われています。

また、発見とほぼ同年代に絶滅したとされており、詳細な食性は分かっていませんが小さな昆虫やミミズ等を食べていたのではないかと考えられています。

生前の姿を想像で描いた挿し絵では、ずんぐりとした体型で描かれており、体全体が茶色で腹側は薄い茶色〜ウグイス色、羽は焦げ茶色で縁取られているためウロコのようにも見えます。

翼は退化しているため小さく、顔には細長いクチバシがあり、尾羽はとても短いです。

飛べない分脚力が発達しているようで、体格に似合わず脚は長く脚の指もしっかりしている印象を受けます。

「スティーブンイワサザイ」の分布・生息地

スティーブンイワサザイはニュージーランドの北島と南島の間にある多数の小島の中で最も北に位置する「スティーブンス島」という島でのみ発見されていましたが、人間がニュージーランドに来る以前はニュージーランド全域に生息していたと考えられています。

「スティーブンイワサザイ」の絶滅した原因

スティーブンイワサザイは「1匹のネコによって絶滅に追いやられた鳥類」とも言われています。

実際は島にはすでに野良猫が生息していたため誤解であると言われていますが、絶滅の原因の1つとなっているのは間違いないでしょう。

また、スティーブンス島以外の島々に生息していたとされる個体群は、マオリが連れ込んだナンヨウネズミによって捕食され絶滅したと言われています。

全ての始まりは1879年6月頃に遡ります。この頃はスティーブンス島に灯台を建設するために建設のための小道や土地の整備のため、多くの人々が島にやって来ました。

そして1892年4月。島に移住して来た建設労働者の1人であるイングラム氏が、この島に生息している2種類のミソサザイについて初報告をあげました。このミソサザイはスティーブンイワサザイとミドリイワサザイであると言われています。

灯台が稼働し始めた1894年。島にペットとして猫が連れ込まれました。その猫は妊娠中でしたが、脱走して野生化したとされています。

また、6月には「ティブルス」という名前の若い猫が連れ込まれており、この猫は灯台守の住居に仕留めた小鳥を持って来たという記録があります。

この小鳥の死骸に興味を持った灯台守のライアル氏は、鳥類に詳しいブラー氏に調べてもらうため、船長のビートゥン氏にその死骸の1つを託しました。

同年7月下旬。この小鳥の死骸が新種であると判断したブラー氏は学会で発表するために科学的な論文の執筆を始めました。その際ビートゥン船長から標本を借り、ロンドンの有名な鳥類画家にリトグラフを書かせています。

その後、ライアル氏はさらにいくつかの標本を発見します。そのうち2つの標本についてブラー氏に伝え、9つの標本は鳥類学者であり資産家であるトラヴァース氏に売ったと言われています。

10月頃。トラヴァース氏はこの小鳥は非常に価値が高いと知り、かなりの資産家であり鳥類学者とされているウォルター・ロスチャイルド男爵に高値で標本を売り付けました。

その際の売り文句は「この鳥は稀少な存在で、近いうちに姿を消してしまうでしょう。」と言われています。買い取った標本を元に、ウォルター・ロスチャイルド男爵は先に執筆をしていたブラー氏を差し置いて論文を発表したとされています。

1895年2月頃。トラヴァース氏は3人の助手を連れてスティーブンス島を訪れ、数日かけてこのイワサザイ達を探しましたが見つける事はできませんでした。

さらに時を同じくして、灯台守であるライアル氏はブラー氏に手紙を宛てています。その内容は「島内に連れ込んだ猫達が野生化してしまい、この島に生息する全ての鳥類に深刻な被害を与えている。」という絶望的な内容でした。

3月7日。トラヴァース氏はウォルター・ロスチャイルド男爵にスティーブンイワサザイの性質や習性についての情報を提供しました。トラヴァース氏によると、この鳥の生きている姿は僅か2回しか確認されていなかったそうです。

12月頃。この島内を探し回ったもののスティーブンイワサザイの姿は見つからず、その翌年も探しましたが結果は変わりませんでした。

そして1903年。スティーブンイワサザイは絶滅と認定されました。その間、島では増えすぎてしまったネコをショットガンを用いて駆除していたそうです。しかし、手を打つのがあまりにも遅すぎてしまったのでした。

「スティーブンイワサザイ」の生き残りの可能性

残念ながらスティーブンイワサザイの生存の痕跡は見つかっておらず、野生化したネコ達によって完全に駆逐されてしまったと考えられています。

しかし、標本ではありますがロンドン自然史博物館やアメリカ自然史博物館、カンタベリー発表、ニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワ等の博物館でその姿を見る事ができます。

余談ですが、たまに「イヌやネコはペットだから大丈夫。野生動物飼育反対。」と言う人がいますが、野生動物の飼育はちゃんと真面目に飼育すれば種の保存に繋がります。

むしろ、イヌネコに対して「ペット」程度の認識であるが故に、逃げた先で起こされた問題が深刻化するケースが世界中で後を絶ちません。

スティーブンイワサザイも、その問題の犠牲となった動物の1つです。この悲劇が、自分が連れ込んだペットのせいで短期間で「種そのもの」が滅んでしまう危険性を、多くの方にご理解いただける事を願います。