絶滅危惧種 PR

【ガラパゴスペンギン】特徴や生息地・絶滅危惧に至った原因

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「ペンギンって南極にしかいないよね?」

「絶滅しそうなペンギンがいるの?」

ガラパゴスペンギンは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでEN(Endangered:危機)に掲載されています。

ガラパゴスペンギンは、最も赤道に近い地域に生息し、北半球にも生息地がある唯一のペンギンです。

最後まで読んでいただくと、ガラパゴスペンギンの特徴・生態・生息地・保護活動について広く知ることができますので、ぜひご覧ください。

「ガラパゴスペンギン」とは

ガラパゴスペンギンは、ペンギン目ペンギン科ケープペンギン属(スフェニスカス属/Spheniscus)に分類される鳥類で、その名の通りガラパゴス諸島の固有種です。

英語ではgalapagos penguinと表記され、学名「Spheniscus mendiculus」は「物乞いのような」という意味で前傾した姿勢に由来しています。

「ペンギンは氷に囲まれて暮らしている」という一般的なイメージとはかけはなれた赤道付近が生息地です。

ここからは、ガラパゴスペンギンの特徴や生態について解説していきます。

ガラパゴスペンギンの特徴

ガラパゴスペンギンの体長は50〜53cm、体重は2.4〜2.6kgで、ペンギン全18種の中で3番目に小さい種です。

全体的に灰色がかった黒色で腹部は白く、目尻から頬を通ってあごの下までCの形の白いラインがあります。

胸から腹部側面を通って太ももまでつながる黒い帯があり、前から見ると胸に黒いラインが2本あるように見えるのが特徴です。

ペンギンの仲間は羽毛の防水機能を保つために年1回換羽しますが、ガラパゴスペンギンだけは年に2回換羽します。

マゼランペンギンやケープペンギンとよく似ていますが、ガラパゴスペンギンはひと回り小さく、胸に黒いラインが2本あるのが見分るポイントです。

熱帯に適応した体

ガラパゴスペンギンはペンギン全18種のなかで唯一熱帯に生息し、赤道直下の暑さに対応する暮らし方をしています。

冷たい海に潜る他のペンギンと同じく、ガラパゴスペンギンの羽毛は体内の熱が奪われにくい構造です。

そのため本来暑さが苦手ですが、ガラパゴスペンギンは次のような暑さ対策をしています。

  • 寒流の流れる海に入る
  • 巣を日陰に作る
  • 翼を広げたり口を開けたりして熱を逃す

ガラパゴス諸島に流れ込む20℃前後の寒流は、ペンギンの餌を運んでくるだけではなく、適度に体を冷やすためにも重要です。

生活の場となる巣は、岩や溶岩の割れ目といった日陰になる場所に作られ、陸上では日陰に隠れて暑さをしのいでいます。

また、腋を広げて足が日陰になるような姿勢で立って、口を開けて喘ぎ体温を調節するパンティングという行為が独特です。

このように、ガラパゴスペンギンは赤道直下でも暮らせるように適応したペンギンなのです。

ガラパゴスペンギンの食べもの

ガラパゴスペンギンは動物食で、主にボラやイワシといった1〜15cmの魚を中心に、甲殻類も食べると考えられています。

他のペンギンと同様に水の中ではとても敏捷で、狩りの時には時速35kmに達するとされ潜水時間は約30秒間です。

昼間に20〜200羽の群れで海に潜って餌を捕りますが、海水温が高く魚が少ない時期は、単独かペアまたは小さな群れで狩りを行います。

餌を確保するために重要なのが、南極から流れてくるフンボルト海流と西から流れ込むクロムウェル深層流という栄養分豊富な寒流です。

ガラパゴスペンギンの繁殖期

ガラパゴスペンギンの繁殖期は定まっておらず、海面水温の変化による食糧事情に左右されます。

海面水温が高くなると餌となる小魚が海の深い所へ移動してしまうので、雛を育てるために十分な餌が確保できません。

逆に海面水温が低いとエサが十分に確保でき繁殖成功率が高くなるため、エサが豊富な時期に合わせていつでも繁殖できるような生態です。

海面水温が24℃未満で平均水温が低い時期が適しており、6〜9月および12〜3月に繁殖が増え、4〜5月の雨季にも繁殖することが分かっています。

ガラパゴスペンギンの巣

ガラパゴスペンギンは、海岸近くの溶岩にできた洞穴や割れ目などを利用し小枝や羽を集めて巣を作り、岩の上で1〜2個の卵を産みます。

ガラパゴスペンギンは、卵やヒナを直射日光から守るために日陰を必要としますが、この島には木がほとんどありません。

そのため、ガラパゴスペンギンは、暑さから逃れるために溶岩にできた洞穴や割れ目などを利用しているのです。

ガラパゴスペンギンは、つがいで繁殖しますが小規模なコロニーを形成する場合もあります。

ガラパゴスペンギンの子育て

ガラパゴスペンギンは雌雄ともに抱卵し、抱卵期間は35〜40日です。

孵化した雛は4週齢まで巣内にとどまり両親から餌をもらって育ち、60〜65日で巣立ちます。

エンペラーペンギン属などではクレイシといわれるヒナが集まる保育所が作られますが、ガラパゴスペンギンでは形成されません。

ガラパゴスペンギンの雛は巣立ち後も親に餌をねだり、親鳥がエサを与える場面が見られますが、鳥類としては珍しいことです。

気候変動の影響で海面水温が上昇し、餌の確保が困難になっていることが関係している可能性があります。

海面水温の上昇で魚が減り、親鳥が十分な餌を確保できず孵化したばかりの雛が全て死んでしまったこともありました。

海面水温に大きく左右されるガラパゴスペンギンの子育てですが、野生化での寿命は11歳以上の記録があります。

「ガラパゴスペンギン」の分布・生息地

ガラパゴスペンギンはその名のとおりガラパゴス諸島に生息し、ガラパゴス諸島の固有種となっています。

ガラパゴス諸島は南米エクアドルの西に位置し、赤道直下にある火山群島で気温が40度を超えることもある熱帯です。

しかし、フンボルト海流とクロムウェル深層流という2つの寒流が流れこみ、周辺海域に栄養豊富な海水をもたらしています。

ガラパゴスペンギンは、はるか昔チリとペルーのフンボルトペンギンの一部が海流に乗ってガラパゴス諸島にたどり着き独自に進化した種とされています。

「ガラパゴスペンギン」の生息地

ガラパゴスペンギンの主な繁殖地はイサベラ島とフェルナンディナ島で、全生息数の約95%がこの2つの島に分布しています。

唯一北半球にも生息するペンギンといわれる理由は、イサベラ島の北端が赤道を超えて北半球にはみ出し、ここにも営巣地があるからです。

少数ながら、バルトロメ島・サンチアゴ島・フロレアナ島でも確認されています。

バルトロメ島の西端にあるピナクルロック周辺は、ガラパゴスペンギンが現れることもある人気のシュノーケルポイントです。

ガラパゴス諸島を訪れる機会があり運が良ければ、野生のガラパゴスペンギンに出会えるかもしれません。

「ガラパゴスペンギン」の生息数

ガラパゴスペンギンの生息数について正確な数の把握は困難ですが、1970年代前半には6千〜1万5千羽と推定されていました。

その後1971年〜72年・1982年〜83年・1997年〜98年とエルニーニョ現象が発生する度に激減を繰り返しています。

ガラパゴスペンギンの生息数は1983年時点で77%減少したとされ、1999年においては推定1,200羽です。

ガラパゴス国立公園と国際NGOであるチャールズ・ダーウィン財団の調査によると、1451羽(2019年)から1940羽(2020年)に増加したとされています。(Charles Rarwin Foundation)

個体数増加の主たる要因は、ラニーニャ現象により赤道域の海面水温が低い状態となり、より多くの魚が餌として供給されたことです。

ガラパゴスペンギンが増加したといっても、全世界で1940羽なので絶滅が心配されることには変わりありません。

「ガラパゴスペンギン」が絶滅危惧種となった理由

ガラパゴスペンギンはガラパゴス諸島に固有の生きものなので、この生息地での絶滅は地球上から姿を消すことを意味します。

2000年には、ガラパゴスペンギンはIUCN(国際自然保護連合)によりEN(Endangered:危機)としてレッドリストに掲載されました。

ガラパゴスペンギンの生息数が減少している原因は、生息地をとりまく環境の変化です。
以下にそれぞれ説明していきます。

エルニーニョ現象

ガラパゴス諸島は赤道直下にあり、3〜6年ごとに太平洋の海水温が上昇するエルニーニョ現象の影響を大きく受けます。

気候パターンが良好なときには、寒流が生息地の周辺海域にガラパゴスペンギンの餌となる豊富な魚を運んできてくれます。

しかしエルニーニョ現象が発生すると寒流の流れが変わり、海水温度が上昇するため小魚が海中深くに移動してしまうのです。

親鳥は子育てに必要な餌だけではなく、自分の食べ物を探すのさえ苦労するようになります。

近年の地球温暖化によりエルニーニョ現象が頻繁に起こるようになり激しさを増していることが、ガラパゴスペンギンが減少した原因の一つです。

人為的に持ち込まれた生物

人が持ち込んでしまった生物がガラパゴスペンギンにとって脅威となっています。

ノイヌやノネコによる成鳥の捕食、ドブネズミやクマネズミによる卵の捕食がその一例です。

ある繁殖地では1匹のノネコによって、49%の親鳥が捕食され死亡したという報告があります。

また、ノネコが媒介したトキソプラズマ原虫がガラパゴスペンギンから検出された報告もあり、今後影響の広がりが軽視できません。

人とともに侵入してしまった蚊が鳥マラリアを媒介した例もあり、免疫をもたないマダガスカルペンギンへの悪影響が心配されています。

島しょ部に生きる他の多くの希少種と同様に、生息数を減らす大きな要因となっているのが移入種問題です。

産業による負荷

ガラパゴス諸島や周辺における産業もガラパゴスペンギンに影響を与えています。

船舶事故による油の海洋汚染は、広範囲の海鳥や魚に壊滅的な影響を与えるため特に深刻です。

また地元の漁業者が使う浮き網にガラパゴスペンギンが意図せずかかってしまうという、混獲の報告があります。

さらに、観光客による繁殖地への侵入や攪乱はマダガスカルペンギンの営巣に直接影響する問題です。

新型コロナウイルスのパンデミックで観光産業が低迷し人為的影響が減ったことが、近年の生息数増加の一因とされています。

このように、人の営みがガラパゴスペンギンに悪影響を与えているのも事実なのです。

「ガラパゴスペンギン」の保護の取り組み

ガラパゴスペンギンを絶滅の危機から救うため、個人や団体が力を注いでいる取り組みは次のようなものです。

ガラパゴス国立公園と国際NGOであるチャールズ・ダーウィン財団は、ガラパゴスペンギンの現状を知るために調査を実施しています。

ガラパゴス保全基金が実施しているのは、ガラパゴスペンギンなど希少鳥類の生息調査だけでなく、プラスチック汚染などが与える影響です。

ペンギン研究者であるP・ディー・ボースマ氏(米ワシントン大学)は、10年ほど前にガラパゴスペンギンの巣作りを始めました。

溶岩にバールと金づちで小さな穴を開けてくぼみを作ったところ、子育てに利用されるようになったとのことです。

当時作られた120個の巣穴のうち少なくとも84個が現在も使える状態にあり、多くの幼鳥が育っていることが確認されています。

プラスチックによる海洋汚染や地球温暖化などの問題は、私達の生活と無関係とは言い切れません。

はるか離れたガラパゴス諸島も、海や大気でつながっているからです。

日々の生活の中で無理なくできることとして、次のようなことが考えられます。

  • プラスチックの使用を減らす
  • ゴミはきちんと分別して処理する
  • 地球温暖化について関心をもつ

ガラパゴスペンギンのことを知ることも、ガラパゴスペンギンを守るための一歩です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。