絶滅危惧種 PR

【カスミサンショウオとは】特徴や生息地・絶滅危惧種になった原因を紹介

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サンショウウオという生物を見たことはありますか?

サンショウウオはトカゲのような四足歩行の生物ですがカエルに近い両生類の仲間です。そのため、その多くは水辺のコケや石の下などに生息しています。

また共通点として低い温度を好み、標高の高い山地の小川や、湧き水の出る水温の低い河川の周辺などに生息していることが多いです。

しかし、きれいな水や低い温度を好む彼らは開発のまさに餌食となっています。また、アライグマなどの外来種による食害や希少種の場合は乱獲されていることも多いです。

今回はまさに絶滅危惧種のお手本とも言えるかわいそうな生物、サンショウウオからカスミサンショウウオを紹介いたします。

「カスミサンショウウオ」とは

カスミサンショウウオは8~10センチ程度のサンショウウオで、明るめの茶色の体色に腹部には黄色い模様が入るのが特徴です。

平地から低山地の水辺近くの林や草地に生息しており、その中でも湿ったコケや石の下を住処としています。何度か捕まえたことがありますが、小川のわきの石の下やコケの影に隠れていることが多かったです。

普段は上記のような場所で潜んでいることが多く、昆虫や、ワラジムシなどの節足動物、ミミズなどの環形動物、カタツムリやナメクジなどの軟体動物を主な食事としています。

昼間は石の下に潜んでいることが多いですが、夜間は外に出て移動を行うようです。

繁殖は1~5月の気温の低い時期に行われ、林の中にある湿地や、池、水田、用水路などで繁殖を行います。

産卵地には湧水があることが多く、水温が一年を通して安定して低めに保たれるような場所が多いです。産卵場所には水中の落ち葉や、木の枝、水草など「卵のう」がくっつくことのできる場所が選ばれる傾向があります。

産卵数は標高の低い場所のほうが多い傾向があり、京都の個体群では標高80mの場所では99個、標高150mの場所では平均49個と半分以下の結果となったとの記録もあります。

幼体はオタマジャクシに足とえらが生えたような姿をしており、小さなウーパールーパーとも言える姿をしています。

幼体は水中の昆虫類やイトミミズやミズミミズなどの環形動物を餌として過ごし、早春に生まれた個体は2~3か月で上陸し、生体へとなります。生体に変態するときにはえらは消失して肺呼吸になるなど陸上生活に適した姿へ変わっていきます。

生体になった後でも繁殖することはできず、性成熟して繁殖ができるようになるのは2歳以降とされています。

もともとは山地や丘陵地の中でも人間生活に近い部分で生活してきたサンショウウオであるためか、近年、宅地開発などの影響を受けて住処を減らしてしまい、その数も減少傾向にあります。

渓流などの住処にするサンショウウオが多い中でも平地の人間生活に近い部分で暮らしてきたためか、カスミサンショウウオは人の影響をもろに受けてしまったサンショウウオとも言えるでしょう。

現在では絶滅危惧種Ⅱ類に分類され、実際に過去の生息地自体が開発などを原因に消失している場所も多く、今よりも減少のスピードは早くなっていくと考えられます。

「カスミサンショウウオ」の分布・生息地

カスミサンショウウオの生息地は主に西日本で、岐阜県が生息の境界となっているようです。

中国、近畿地方、四国、九州の低地の湿地に生息しています。

サンショウウオの多くは標高の高い山地に生息することが多いですが、カスミサンショウウオはその中でも標高の低い土地に適応したサンショウウオであると言えます。

それでも好む場所は涼しく、湿った場所で、湧き水の出る水路や河川の近くのコケの裏や石の下を住処にしていることが多いです。

「カスミサンショウウオ」が絶滅危惧種となった理由

現在は環境庁レッドリストにて絶滅危惧種Ⅱ類に分類されているカスミサンショウウオですが、その昔は低地でも多く見られたサンショウウオでした。

しかし、様々な理由で生息地が分断されたことで限定的な生息地に個体群が存在しています。

カスミサンショウウオは環境変化に弱く、環境指標性が高いです。

環境指標とは綺麗から汚いまで、環境としての指標を示す生物のことを言います。生息している生物でおおよその水質などが推測されるため、捕獲された生物で河川の様子などを知ることができます。

カスミサンショウウオが数を減らした最大の理由は開発でしょう。

カスミサンショウウオは前述の通り、環境指標性が高いことから河川改修や、山地の開発の影響をもろに受けます。

彼らが生息していいるのは低地でも湧き水の出る水辺という気温も低く、清浄な水の豊富にある場所です。そのため、生息地は広くとも、その中でも限定的な生息地となり、幅広くいたるところにいるわけではないのです。

例えば、京都に生息する個体群であれば、河川に近く、水辺であれば必ずいるというわけではないのです。

京都の中でも彼らの生息に適した低地、かなり住む場所にはうるさい生物なので、住んでいる場所ごと開発されてしまえば行き場を失うだけでなく、生き埋めになっている可能性すらあります。

開発による影響はかなり大きく、生息地ごと個体群が消失している例がかなり多くあります。開発を始める前にこういった希少生物の住処になっているかどうか、ということを調査する必要がありますが、やはり資本主義のこの国家ではそういったことはなかなか難しいもので、利益優先で動いてしまうことが大多数です。

開発を止めることは難しいですが、やはり専門家や自然保護などを目的に反対活動を行うことでも意義はあると思います。

次に影響を及ぼしているのが外来生物問題です。大きく影響を与えているのはブルーギル、ブラックバスといった外来性の魚類。そしてアライグマ、ウシガエルといった肉食の大型捕食者です。

こちらのほうが人間が大きく関わってしまった例でしょう。

ブラックバス、ブルーギルはアメリカ原産の外来種で日本各地で猛威をふるう圧倒的捕食者です。

ブラックバスやブルーギルもカスミサンショウウオの生息している水辺付近で増えており、水中での生活を行う幼生が捕食されるなどの影響が出ています。

特に湧き水の出る湖沼であれば閉鎖的な環境であることから、カスミサンショウウオに逃げ場はなく、誰かが密放流したブラックバスなどが入り込めば、あとは在来生物は捕食されるのみです。

ブラックバスやブルーギルは密放流はおろか、生きたままの輸送すら禁止されている生物です。そのため、法に抵触するのですが、釣り場を増やそうとする無知式な釣り人、もっと悪質なものであれば知っていてもバレなきゃいいという考えのもと密放流する輩も存在します。そういった人間の悪意にカスミサンショウウオは生存に圧力をかけられているのです。

次にアライグマなどです。こちらは陸上生活をする成体が食害にあっています。

通常、夜行性であるカスミサンショウウオ、これは鳥やヘビといった昼行性の生物からの捕食をさけるために進化したものと考えられますが、外来生物のこれらは夜行性であり、アライグマによる食害は深刻で、西日本を中心に増えているアライグマはカスミサンショウウオの生息地に多く住んでいるということになります。

夜行性のアライグマはかなり肉食性が強く、ときには亀といった防御全振りの生物ですら命を落とすこともある攻撃性を見せます。

無防備で夜歩いているサンショウウオは逃げることなど到底できず、アライグマの餌食です。アライグマによって個体群がほぼ壊滅させられた場所もあるくらいなので、かなりやっかいな相手です。

アライグマ、ラスカルというアニメの影響で日本でもペットのブームになったアライグマですが、実は凶暴で全然なつかない、噛みついてくるなどの理由で野外に逃がされた個体が多く存在します。もともと肉食哺乳類の少ない日本では瞬く間に増えていき、今では2~3万頭のアライグマが日本に生息しているとされています。

かわいそうですが、外来種を駆除する以外に手はありませんね。

「カスミサンショウウオ」の保護の取り組み

日本各地ではカスミサンショウウオを守るべく、様々な活動が行われています。

福岡県では県の保健環境研究所の指導の下、ボランティア団体がカスミサンショウウオの生息域に山から水を引いたりすることで、産卵に適した水深にしたり、身を隠すための板をしいたりすることでカスミサンショウウオの住みやすい環境づくりを行っています。

滋賀県ではカスミサンショウウオの保護活動として看板を立てたり、周辺住民との交流を経て、乱獲や不法投棄などをする不審者を通報するシステムができたという例もあり、単に環境を守り、整備すること以外でも保護活動は行えるという実績を残しました。

こういった環境保全だけでなく、人とのつながりがカスミサンショウウオをはじめとした絶滅危惧種を守っていくということがよくわかりますね。